製造業の障がい者雇用を考えるとき、「どの仕事を任せられるのか」「品質や納期を守れるのか」と不安を感じる担当者は少なくありません。仕分け・梱包・検品などの軽作業は、工程を整理し、本人の適性に合わせて役割を設定することで、仕事の選択肢となります。
ただし、すべての障がいのある方が反復作業を得意とするわけではありません。大切なのは、個人の希望や得意・不得意を確認し、無理なく続けられる工程を設計することです。
この記事では、中小企業診断士の業務改善の視点を踏まえ、作業の切り出し、品質・納期管理、合理的配慮、就労継続支援事業所との連携まで、導入時に押さえたいポイントを解説します。
この記事で分かること
- 製造業で検討しやすい軽作業の種類と選び方
- 業務切り出しから試行までの具体的な手順
- 品質・納期を安定させる現場管理の方法
- 直接雇用と就労継続支援事業所への業務委託の違い
目次
1.製造業で任せられる軽作業
製造業の軽作業には、部品・資材の仕分け、個数確認、袋詰め、ラベル貼り、梱包、外観検品などがあります。作業の難易度は「軽作業」という名称だけでは判断できません。同じ袋詰めでも、数える個数、扱う製品の重さ、必要なスピード、誤投入時の影響によって負担は異なります。
1-1.軽作業の具体例
| 作業 | 具体的な内容 | 導入時の確認点 |
|---|---|---|
| 仕分け | 色・型番・品番ごとに分類 | 判別方法と混入防止 |
| 袋詰め・梱包 | 指定個数の封入、箱詰め | 数量と封入順序 |
| ラベル貼り | 所定位置へのラベル貼付 | 向き・位置・誤貼付 |
| 検品 | 傷・汚れ・数量の確認 | 良品・不良品の基準 |
| 出荷準備 | 数量確認と箱の整理 | 納期・重量・運搬方法 |
最初は、完成基準が分かりやすく、危険な設備の操作を伴わない工程から検討すると、本人にも担当者にも負担をかけにくくなります。安全性、衛生管理、製品の取り扱い条件を先に確認してください。
1-2.本人の適性との合わせ方
繰り返しの作業が得意な方もいれば、一定時間ごとに作業を切り替える方が集中しやすい方もいます。障がい名だけで担当業務を決めず、本人の希望、作業姿勢、視認のしやすさ、疲労の出方、必要な支援を確かめましょう。
例えば、細かい部品の目視確認が負担になる場合は、拡大器具を用意する、照明を変える、別の工程を提案するなどの調整が考えられます。本人と相談しながら試行し、合う方法を探すことが基本です。

2.軽作業の導入・改善例
ここでは製造現場で考えられる改善例を紹介します。以下は手順を説明するための例示であり、特定企業の実測成果や、だいこん畑の実績を示すものではありません。実際の導入では、開始前後の数量や不良件数を記録して効果を検証します。
2-1.仕分け・梱包工程
複数の部品を一度に扱う工程では、似た形状の部品が混ざることがあります。品番ごとに色付きの容器を分け、見本写真を作業台に置き、投入前に数量を確認する仕組みにすると、判断に迷う場面を減らせます。
作業の途中で検品を入れる場合は、「誰が」「どの段階で」「何を確認するか」まで決めておきます。個人の注意力だけに頼るのではなく、誰が作業しても同じ基準で確認できる工程にすることが品質の安定につながります。
2-2.検品・チェック工程
外観検品では、良品と不良品を文章だけで説明しても判断が揃わないことがあります。傷や汚れの許容範囲を写真で示し、迷う場合は担当者に確認するルールを設けます。
検品の結果は、不良の種類や発生工程ごとに記録します。原因が資材なのか、手順なのか、検品方法なのかを分けて考えることで、同じ不具合を繰り返さない改善につながります。
3.業務切り出しの進め方
「業務切り出し」とは、現場で行われている仕事を細かい工程に分け、担当しやすい単位に整理することです。既存社員の仕事をそのまま渡すのではなく、手順、作業時間、危険要因、確認事項を把握するところから始めます。
3-1.工程の棚卸しと選定
- 現場の仕事を作業単位で一覧にする
- 数量・所要時間・必要な技能・安全上の注意点を記録する
- 作業手順が明確で、試行しやすい工程を候補にする
- 本人や支援担当者と相談し、負荷や適性を確認する
- 試行する期間・数量・品質基準を決める
例えば「出荷作業」全体ではなく、「部材を10個ずつ袋に入れる」「品番シールを照合する」といった単位まで分けると、教え方と確認方法を具体化できます。ただし、過度に単純化して能力を決めつけず、習熟に応じて役割を広げる余地も残します。
3-2.手順書と試行の進め方
手順書には、完成品の写真、使用資材、作業の順番、不良の例、迷ったときの連絡先を載せます。文章量を増やすより、写真・番号・短い説明で一つずつ確認できる形が有効です。
試行時は、最初から大量の仕事を任せず、少量で手順や品質を確認します。出来高だけでなく、疲労、作業姿勢、質問のしやすさ、休憩の取り方も振り返り、必要に応じて手順書や配置を修正します。

4.品質と納期を守る管理方法
軽作業を継続するには、完成数量だけでなく、品質と納期の管理が欠かせません。管理項目を絞って記録し、問題が起きたときに工程を確認できる状態にしておきます。
4-1.検品基準と出来高の共有
| 管理項目 | 記録・確認する内容 |
|---|---|
| 出来高 | 日別の完成数量、作業時間 |
| 品質 | 不良件数、不良の種類、再検品結果 |
| 納期 | 予定数量、残数量、完了予定日 |
| 工程 | 担当工程、手順変更の有無 |
| 連絡 | 確認事項、修正依頼、対応結果 |
日報や一覧表を活用し、発注側と受注側で同じ情報を確認できるようにします。品質が合格したものだけを完成数量に含めるなど、集計ルールも統一します。
4-2.遅延やミスへの対応
予定より作業が進まない場合は、本人を急がせる前に、工程の難しさ、資材の不足、検品にかかる時間、人員配置を確認します。必要なら工程を分け直し、作業量や納期を発注者と調整します。
ミスが続く場合も同様です。ラベルの見分けにくさ、部品の配置、手順の説明不足など、原因を工程側から確認し、改善結果を記録します。
5.働きやすい職場環境の整備
障がいのある方が働きやすい職場は、作業内容だけでなく、指示の伝え方や相談のしやすさによっても変わります。直接雇用では、本人の状況と業務上の必要性を踏まえ、合理的配慮を対話によって検討することが大切です。
例えば、口頭指示に加えて写真付き手順書を渡す、作業台の高さを調整する、騒音の少ない場所を選ぶ、休憩のタイミングを相談する、といった方法があります。同じ配慮がすべての方に適するわけではないため、本人の意向を確認して調整します。
また、現場責任者、指導担当者、本人の間で、質問・変更・体調不良時の連絡方法を決めておくことも大切です。困ったときに相談できる仕組みは、誤作業の予防と継続的な就労支援の両方に役立ちます。
関連記事:だいこん畑の障がい者就労支援情報でも、働きやすい環境づくりに関する情報を紹介しています。

6.就労支援事業所との企業連携
企業が軽作業を担ってもらう方法には、障がいのある方を自社で雇用する方法と、就労継続支援事業所などへ業務を委託する方法があります。直接雇用と業務委託は別の仕組みであり、委託しただけで自社の障がい者雇用人数に算入されるわけではありません。
| 比較項目 | 自社での直接雇用 | 事業所への業務委託 |
|---|---|---|
| 関係 | 企業と本人の雇用契約 | 企業と事業所の業務契約 |
| 作業場所 | 企業内など | 事業所内など、契約条件による |
| 管理 | 企業が業務・労務を管理 | 事業所が利用者支援・作業を管理 |
| 確認事項 | 配置・安全・合理的配慮 | 仕様・品質・単価・納期・連絡体制 |
業務委託を検討する場合は、①相談、②仕様確認、③試行・見積、④条件調整、⑤契約・開始という順で進めると、発注する側と受ける側の認識を揃えやすくなります。作業内容や納期に加えて、資材搬入、検品責任、不良品の扱いも事前に取り決めます。
大阪市で就労継続支援事業所との連携を検討する場合は、だいこん畑の就労継続支援A型、就労継続支援B型の案内もご覧ください。実際に委託可能な作業や受入条件は、個別に確認する必要があります。
7.製造業の軽作業に関するFAQ
Q.障がいのある方にはどのような軽作業を任せられますか?
A.仕分け、袋詰め、ラベル貼り、梱包、検品などが候補です。ただし、本人の適性、必要な配慮、安全性、作業基準を確認してから決めます。
Q.品質のばらつきはどう抑えますか?
A.良品・不良品の見本を用意し、数量確認、ダブルチェック、検品結果の記録を組み合わせます。誰が担当しても判断が揃う仕組みを目指します。
Q.少量の仕事でも就労継続支援事業所へ依頼できますか?
A.対応できる作業量や種類は事業所ごとに異なります。数量、単価、納期、資材の受け渡し方法を示して相談すると、可否を確認しやすくなります。
Q.業務委託をすれば障がい者雇用率に反映されますか?
A.一般に、外部の就労継続支援事業所への発注は、自社での直接雇用とは異なり、発注したことだけで自社の雇用人数に算入されるものではありません。雇用率制度の詳細は公的な最新資料を確認してください。
まとめ
製造業で障がいのある方が力を発揮するためには、作業を細分化するだけでなく、本人の適性や希望に合った業務の設定、分かりやすい手順、品質・納期を管理できる仕組みが必要です。
- 仕分け・梱包・検品などを、安全性と作業基準から検討する
- 写真付き手順書と少量の試行で無理のない工程を設計する
- 出来高・不良・納期を記録し、工程改善につなげる
- 直接雇用と業務委託の違いを理解して連携方法を選ぶ
就労継続支援事業所への軽作業委託や、具体的な作業内容の相談を検討している企業の方は、だいこん畑のお問い合わせ窓口からご相談ください。対応できる内容は作業条件を確認したうえでご案内します。
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