「就労継続支援B型にも総量規制があるの?」「これからB型事業所を開設したいけれど、新規指定を受けられないことがある?」と気になっている事業者の方もいるのではないでしょうか。
就労継続支援B型は総量規制の対象となっており、地域のサービス供給量などによっては、新しい事業所の指定が行われない場合があります。令和8年度から突然始まった制度ではなく、B型は以前から総量規制の対象です。
一方、令和8年度障害福祉サービス等報酬改定では、B型の基本報酬区分の見直しに加え、令和8年6月1日以降に新規指定される一定のB型事業所を対象とした応急的な報酬単価も設けられました。これから開業する場合は、指定を受けられるかだけでなく、指定後の収支についても確認する必要があります。
この記事では、就労継続支援B型の総量規制の仕組み、令和8年度報酬改定、新規開業や既存事業所への影響、工賃や生産活動を含めた今後の運営について分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- 就労継続支援B型の総量規制の仕組み
- 令和8年度報酬改定で変わった内容
- 新規開業や既存事業所への影響
- 今後のB型事業所運営で確認したいポイント
目次
1.就労継続支援B型の総量規制とは?
就労継続支援B型の総量規制とは、地域に必要な障害福祉サービスの量と現在のサービス提供量を踏まえ、一定の場合に新しい事業所を指定しないことができる仕組みです。
障害福祉サービスは、事業者が指定基準を満たして申請すれば、どの地域でも必ず新規指定を受けられるとは限りません。
都道府県等は障害福祉計画を作成し、地域ごとに必要となるサービス量の見込みを定めています。すでにサービス提供量がその見込みに達している場合など、計画の達成に支障が生じるおそれがあると判断されると、新規指定を行わないことがあります。
1-1.総量規制の基本的な仕組み
総量規制を理解するときは、「地域にB型事業所が何か所あるか」だけを見るのではなく、その地域で必要とされるサービス量と、すでに提供されているサービス量との関係を見る必要があります。
たとえば、ある地域ですでに必要と見込まれるサービス量が確保されており、新しい事業所を指定すると障害福祉計画の達成に支障が生じると判断される場合があります。
このような場合、指定権者が新規指定を行わないことがあります。
つまり、「物件が基準を満たしている」「必要な職員を採用できる」という条件だけでは、新規開業できるとは限りません。
1-2.B型は以前から対象になっている
就労継続支援B型について、「令和8年度から総量規制が始まった」と思われることがありますが、B型は以前から総量規制の対象となっています。
国の資料では、生活介護、就労継続支援B型、障害者支援施設について、平成18年度から総量規制の対象として整理されています。
最近になって注目されているのは、B型が新たに対象になったからではありません。事業所数やサービス供給量が増えている中で、地域の必要量を確認しながら新規指定を考える必要性が高まっているためです。
ポイント
就労継続支援B型は令和8年度から初めて総量規制の対象になったわけではありません。新規開業を検討するときは、物件探しより前に、開設予定地域の指定権者へ最新の運用状況を確認することが大切です。

2.令和8年度改定で何が変わった?
令和8年度障害福祉サービス等報酬改定では、就労継続支援B型についても複数の見直しが行われました。
特に事業所運営への影響が大きいのが、新規指定事業所に対する応急的な報酬単価と、平均工賃月額に応じた基本報酬区分の見直しです。
総量規制そのものと報酬改定は別の仕組みですが、これからB型事業所を開設する事業者にとっては、両方を確認したうえで収支計画を作る必要があります。
2-1.新規指定事業所の報酬措置
令和8年6月1日以降に新規指定された一定の就労継続支援B型事業所では、応急的な報酬単価として、原則、所定単位数の1000分の984に相当する単位数が算定されます。
そのため、新規開業を計画するときに、既存事業所とまったく同じ基本報酬単価を前提として収支計画を作ると、実際の収入との差が生じる可能性があります。
ただし、すべての新規指定事業所に一律で同じ取扱いが適用されるわけではありません。重度障害者への支援や地域の事情などに配慮した取扱いも設けられています。
自事業所がどの取扱いに該当するのかは、開設予定地域の指定権者や最新の報酬改定資料を確認してください。
2-2.平均工賃による報酬区分の見直し
平均工賃月額に応じて基本報酬が決まる報酬体系についても、令和8年度に区分基準が見直されています。
平均工賃月額が上昇している状況などを踏まえ、従来の区分基準が見直されるとともに、一部では中間的な区分も設定されています。
そのため、前年度より工賃が上がっていても、報酬区分が必ず上がるとは限りません。
平均工賃月額に応じた報酬体系を選択している事業所では、年度末になって初めて工賃実績を確認するのではなく、毎月の実績から年度末の見込みを確認しておく必要があります。
確認しておきたいこと
総量規制は「新規指定を行うかどうか」の仕組み、報酬改定は「指定後にどのような報酬を算定するか」の仕組みです。新規開業では、この2つを分けて確認しましょう。
3.新規開業にはどう影響する?
総量規制の影響を特に受けやすいのは、これからB型事業所を新しく開設しようとしている事業者です。
指定基準を満たす物件や職員を準備した後で新規指定が難しいと分かれば、家賃、採用費、設備費などの負担だけが残る可能性があります。
そのため、新規開業では「物件を見つけてから行政へ相談する」のではなく、できるだけ早い段階で指定権者へ相談することが重要です。
3-1.新規指定を受けられない場合
地域のサービス供給量が障害福祉計画で必要とされる量に達している場合などには、新しい事業所の指定が行われない可能性があります。
ただし、「地域にB型事業所が多い」という理由だけで機械的に判断されるものではありません。
地域の障害福祉計画、現在のサービス量、新たな事業所を指定した場合の影響などを踏まえて判断されます。
総量規制の具体的な運用は地域によって異なるため、別の自治体で開設できた事例があったとしても、同じ条件で開設できるとは限りません。
3-2.物件契約前に確認したいこと
B型事業所の新規開業を検討する場合は、物件の契約前に少なくとも次の点を確認しておきましょう。
- 開設予定地域で新規指定が可能か
- 総量規制をどのように運用しているか
- 事前相談や事前協議が必要か
- 公募方式を採用していないか
- 物件について事前確認が必要か
- 指定までにどの程度の期間が必要か
- 新規指定時に適用される基本報酬
物件契約、内装工事、職員採用を先に進めてしまうと、指定を受けられなかった場合の損失が大きくなります。
行政への相談と並行して、想定利用者数、人員配置、人件費、家賃、報酬単価などを使った収支計画も作成しておきましょう。

4.既存のB型事業所への影響
総量規制という言葉から、「既存のB型事業所も閉鎖させられるのではないか」と心配する方もいるかもしれません。
総量規制は、地域のサービス供給量などを踏まえて新規指定を行わないことができる仕組みです。総量規制があるという理由だけで、現在指定を受けて運営している事業所が直ちに閉鎖される制度ではありません。
4-1.既存事業所が閉鎖される制度ではない
すでに指定を受けているB型事業所については、総量規制が強化されたからといって、そのことだけを理由に指定がなくなるものではありません。
ただし、定員の増加、新しい事業所の追加、移転などを計画する場合は、自治体との事前協議が必要になることがあります。
既存事業所であっても事業規模を変更するときは、「現在指定されているから問題ない」と判断せず、あらかじめ指定権者へ確認してください。
4-2.利用者に選ばれる事業所づくり
新しい事業所が増えにくくなったとしても、既存事業所の経営が自動的に安定するわけではありません。
利用者は、作業内容、通いやすさ、工賃、職員との関係、利用時間、送迎、事業所の雰囲気など、さまざまな点を確認して利用先を選びます。
相談支援専門員や家族が紹介先を検討するときも、「どのような人に合う事業所なのか」が分からなければ紹介しにくくなります。
自事業所の特徴を整理し、ホームページやパンフレットなどで具体的に伝えることも重要です。
就労継続支援B型のサービス内容については、だいこん畑の就労継続支援B型でも紹介しています。
5.工賃と生産活動をどう見直す?
令和8年度改定では平均工賃月額に応じた基本報酬区分も見直されているため、B型事業所では工賃と生産活動をこれまで以上に数字で確認する必要があります。
ただし、工賃を上げるために利用者へ長時間の作業や無理な作業量を求めることは適切ではありません。
利用者の体調や障害特性に配慮しながら、生産活動そのものの収益性を高める視点が必要です。
5-1.作業別収支を把握する
最初に行いたいのが、生産活動を作業ごとに分けて収支を確認することです。
- 月間売上
- 材料費
- 送料や運搬費
- 販売手数料
- 利用者の作業時間
- 職員が対応した時間
- 利用者へ支払った工賃
売上だけを見ていると、「売れている仕事=利益が出ている仕事」と判断してしまうことがあります。
実際には、材料費や送料が高かったり、職員が長時間検品や納品に対応していたりすると、売上が大きくても十分な利益が残らない場合があります。
5-2.仕事の単価と職員負担を確認する
単価の低い仕事でも、作業手順が安定していて年間を通じて継続的に受注できる仕事であれば、事業所に適している場合があります。
反対に、単価が高くても職員の検品や納期管理に多くの時間が必要であれば、職員負担が大きくなります。
新しい仕事を受けるときは、単価だけでなく、利用者が取り組みやすい工程に分けられるか、品質基準を守れるか、納期に無理がないかまで確認します。
たとえば、一つの作業を「選別」「袋詰め」「シール貼り」「検品」「梱包」などに分ければ、得意な工程を担当できる利用者が増えることがあります。
6.今後必要になるB型の経営管理
総量規制や報酬改定へ対応するには、制度が変わったときだけ数字を確認するのではなく、普段から事業所の状況を把握しておくことが大切です。
少なくとも、次のような項目は毎月確認できるようにしておきましょう。
- 登録利用者数
- 1日あたりの平均利用者数
- 利用日数や欠席状況
- 平均工賃月額
- 作業ごとの売上と経費
- 職員人件費
- 加算の算定状況
- 月ごとの収支
- 現預金残高と資金繰り
特に生産活動については、障害福祉サービスの収支と混ぜず、生産活動に係る収支を分けて把握する必要があります。
また、数字だけではなく、職員の業務量も確認します。サービス管理責任者や職業指導員など一部の職員だけに、支援、送迎、記録、営業、納品管理などが集中していないかを見直しましょう。
経営を安定させるには、利用者数を増やすだけではなく、支援の質、生産活動、職員体制、収支を一緒に確認する必要があります。
毎月確認する
制度改定が発表されてから数字を集めるのではなく、利用者数、工賃、作業別収支、人件費などを毎月確認しておくと、制度変更による影響を早く把握できます。

7.B型の総量規制でよくある質問
Q.B型の総量規制は令和8年度から始まったのですか?
いいえ。就労継続支援B型は以前から総量規制の対象です。国の資料では平成18年度から対象サービスとして整理されています。
令和8年度には報酬改定も行われているため、総量規制と報酬改定を分けて理解する必要があります。
Q.総量規制がある地域ではB型を開業できませんか?
必ず開業できないという意味ではありません。
地域の障害福祉計画やサービス供給量などを踏まえて、新規指定の可否が判断されます。具体的な運用については、開設予定地域の指定権者へ確認してください。
Q.既存のB型事業所も閉鎖されますか?
総量規制があるという理由だけで、既存事業所が直ちに閉鎖される制度ではありません。
ただし、定員増加や新しい事業所の開設などを行う場合は、新たな確認や協議が必要になることがあります。
Q.物件を契約してから行政へ相談してもよいですか?
物件契約より前に相談することをおすすめします。
指定を受けられない場合や、想定していた時期に開設できない場合、家賃や工事費などの負担が発生する可能性があるためです。
Q.工賃を上げれば基本報酬も必ず上がりますか?
必ず上がるとは限りません。
平均工賃月額に応じた報酬体系では、基本報酬区分の基準が定められています。令和8年度には区分基準の見直しも行われているため、最新の基準と自事業所の工賃実績を確認してください。
Q.総量規制についてどこへ確認すればよいですか?
新規指定を予定している地域の指定権者へ確認します。
自治体によって事前相談、事前協議、公募などの手続きが異なることがあるため、ホームページの情報だけで判断せず、最新の運用状況を担当部署へ確認すると安心です。
まとめ|開業前に総量規制を確認する
就労継続支援B型の総量規制は、地域の障害福祉計画やサービス供給量などを踏まえて、新しい事業所の指定を行わないことができる仕組みです。
B型は令和8年度から初めて総量規制の対象になったわけではありません。一方、令和8年度報酬改定では、新規指定事業所の応急的な報酬単価や平均工賃月額に応じた基本報酬区分などが見直されています。
- B型は以前から総量規制の対象になっている
- 地域によっては新規指定を受けられない場合がある
- 物件契約前に指定権者へ確認する
- 新規指定では適用される報酬単価も確認する
- 既存事業所が総量規制だけで直ちに閉鎖される制度ではない
- 工賃だけでなく作業別の収支を確認する
- 利用者数・工賃・人件費・資金繰りを毎月把握する
これからB型事業所を開設する場合は、指定基準を満たすことだけでなく、「その地域で新規指定が可能か」「指定後にどの報酬が適用されるか」まで確認してから事業計画を進めることが大切です。
すでにB型事業所を運営している場合も、総量規制だけに注目するのではなく、利用者に必要とされる支援、生産活動の収益性、工賃、職員体制を継続的に見直していきましょう。
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