「B型事業所で自主製品を作ってみたい」「ハンドメイド商品を販売すれば工賃を上げられる?」と考えている方もいるのではないでしょうか。
就労継続支援B型では、企業から受託した仕事だけでなく、事業所が商品を企画・製造・販売する「自主製品づくり」に取り組むことがあります。
自主製品には、ハンドメイド雑貨、食品、アクセサリー、縫製品などさまざまな形があります。製作だけでなく、材料準備、検品、包装、値札付け、在庫管理、販売など、複数の工程を生産活動として組み立てられることも特徴です。
一方で、「作りたい商品を作れば売れる」というものではありません。材料費、販売価格、製作時間、在庫、販売手数料などを考えなければ、売上があっても工賃の原資が十分に残らない場合があります。
この記事では、B型事業所における自主製品づくりの意味から、商品企画、利用者との作業分担、原価計算、価格設定、品質管理、販路、在庫管理、工賃につなげる考え方まで分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- B型事業所における自主製品づくりの意味
- 自主製品で考えられる仕事内容
- 商品企画で最初に確認したいこと
- 利用者と作業を組み合わせる方法
- 原価と販売価格の考え方
- 品質・在庫・販路を管理するポイント
- 自主製品を工賃向上につなげる考え方
目次
1.B型事業所の自主製品とは?
自主製品とは、事業所が自ら企画し、製造や加工、販売などを行う商品のことです。
企業から「この作業をしてください」と依頼を受ける受託作業とは異なり、何を作るのか、いくらで販売するのか、どこで販売するのかなどを事業所側で考えます。
1-1.事業所が企画・販売する商品
自主製品にはさまざまなものがあります。
- アクセサリー
- 布小物・縫製品
- 雑貨
- 木工製品
- 焼き菓子などの食品
- 農産物や加工品
実際にどのような製品を作るかは、事業所の設備や職員体制、利用者の希望、販売先などによって異なります。
1-2.製作以外にも仕事がある
自主製品づくりは、商品を作る工程だけが仕事ではありません。
- 材料を準備する
- パーツを組み立てる
- 完成品を検品する
- 包装する
- 値札を付ける
- 在庫を数える
- 商品写真を撮影する
- ネットショップへ登録する
- 販売する
工程を整理することで、一つの商品づくりの中に複数の仕事内容を作れる場合があります。
1-3.売上は工賃にも関係する
就労継続支援B型では、生産活動によって得た収入から必要経費を差し引いた金額が、利用者へ支払う工賃の原資になります。
そのため、自主製品を考えるときは、「利用者が楽しく取り組める商品か」だけでなく、「商品として継続して販売できるか」という事業面の視点も欠かせません。
B型の生産活動について詳しく知りたい方は、だいこん畑の就労継続支援B型もご覧ください。

2.自主製品づくりのメリット
自主製品づくりの特徴は、一つの商品について複数の工程を作りやすいことです。
製作を得意とする方だけでなく、検品、包装、写真撮影、在庫確認など、別の工程に取り組むこともできます。
また、自分が関わった商品が完成し、実際に販売されることによって、仕事の結果が分かりやすい場合もあります。
一方で、自主製品であれば必ず利用者のやりがいや工賃向上につながるわけではありません。
本人が希望している仕事か、無理のない工程か、製品が市場で求められているかなどを確認しながら取り組むことが重要です。
3.どんな商品を作る?
自主製品を始めるときに、最初から「何を作りたいか」だけで商品を決めないことが重要です。
少なくとも、次のような点を確認します。
- 誰が買う商品なのか
- どのような場面で使うのか
- いくらなら購入してもらえそうか
- 材料費はいくらかかるか
- 利用者が取り組める工程があるか
- 継続して製造できるか
- どこで販売するか
「作れるもの」から考えるだけではなく、「買ってもらえるもの」との両方から商品を考えることが必要です。
4.ハンドメイド・雑貨
自主製品で取り組みやすい分野の一つが、アクセサリーや布小物などのハンドメイド商品です。
材料の準備、パーツの組み立て、縫製、検品、包装など、工程を細かく分けられる場合があります。
ただし、「ハンドメイドだから付加価値がある」「福祉事業所の商品だから買ってもらえる」と考えるだけでは販売を継続できません。
デザイン、品質、価格、使いやすさなど、一般の商品と同じように購入する側の視点で考える必要があります。
5.食品・加工品
焼き菓子や加工食品などを自主製品として製造・販売する事業所もあります。
食品の場合も、製造だけではなく、計量、包装、ラベル貼り、箱詰め、清掃など複数の仕事があります。
一方で、食品を製造・販売する場合には、衛生管理、表示、営業許可など、商品の内容や販売方法に応じて関係する法令・制度を確認する必要があります。
原材料には消費期限などもあるため、雑貨以上に在庫と製造量の管理が重要になる場合があります。
6.地域資源を活用した商品
地域の農産物や素材などを活用して商品を作る方法も考えられます。
地域の企業や生産者から材料を仕入れたり、規格外品などを加工品として活用したりする方法があります。
ただし、「地域の商品だから売れる」とは限りません。
地域性は商品の特徴の一つにはなりますが、購入者にとってどのような価値があるのかを考えることが必要です。
商品名やパッケージだけで地域性を表現するのではなく、原材料や製造方法など、実際の商品内容と結び付けて考えましょう。

7.利用者と作業を組み合わせる
自主製品づくりでは、障害名だけを見て担当工程を決めないことが重要です。
「細かい作業が得意だからアクセサリー」「体力があるから木工」というように単純に当てはめるのではなく、実際に作業を経験しながら確認します。
同じ製品でも、製作は負担でも包装は取り組みやすい方や、製造より商品写真の撮影を得意とする方がいるかもしれません。
本人の希望、得意不得意、集中できる時間、作業の疲れ方などを確認し、無理なく参加できる工程を検討します。
商品ではなく工程まで見る
「アクセサリー作りができるか」ではなく、「材料準備・組立・検品・包装など、どの工程なら取り組みやすいか」まで細かく見ることが仕事づくりにつながります。
8.商品開発は小さく試す
新しい商品を思いついても、最初から大量に材料を購入する必要はありません。
まず少量を試作し、製作時間、材料費、品質、利用者が取り組める工程などを確認します。
その後、実際に少量を販売し、購入者の反応を見る方法があります。
売れなかった場合も、商品そのものに問題があるとは限りません。価格、販売場所、見せ方などに原因がある可能性もあります。
試作と小規模販売を繰り返しながら、商品として継続できるか判断する方が、在庫や材料費のリスクを抑えやすくなります。
9.原価を把握する
自主製品で特に重要なのが、商品1個を作るためにどの程度の費用がかかっているかを把握することです。
- 材料費
- 包装資材
- ラベルや印刷費
- 販売手数料
- 送料
- その他商品を販売するために必要な経費
たとえば500円で販売していても、材料や包装、販売手数料などに400円かかれば、残る金額は100円です。
売上額だけを見て「よく売れている」と判断せず、経費を差し引いてどの程度残るのか確認する必要があります。
10.販売価格をどう決める?
販売価格を決めるときに、「福祉事業所の商品だから安くする」という考え方だけで価格を設定すると、工賃の原資を確保しにくくなります。
材料費などの原価を確認したうえで、同じような商品が市場でいくらで販売されているかも確認します。
高すぎれば購入されにくくなりますが、安すぎても継続的な生産活動になりません。
商品の品質や特徴、購入する人、販売する場所などを考えながら価格を決定します。
11.品質を安定させる
自主製品を継続して販売するためには、品質を安定させることも重要です。
同じ商品を購入しても、毎回大きく品質が異なれば、継続的な購入につながりにくくなります。
そこで、完成品の基準をできるだけ分かりやすくします。
- 大きさ
- 数量
- 傷や汚れ
- 包装方法
- ラベルの位置
写真や見本を使って完成基準を共有する方法もあります。
利用者だけに品質管理を任せるのではなく、事業所として確認の仕組みを作ることが必要です。

12.在庫を持ちすぎない
自主製品では、作ることが支援活動の中心になり、気付いたときには大量の在庫を抱えていることがあります。
しかし、売れていない商品を作り続けても工賃原資は増えません。
在庫が増えると、材料費が先に発生するだけでなく、保管場所も必要になります。
商品ごとに「何個作ったか」「何個売れたか」「現在何個残っているか」を確認し、販売状況に合わせて生産量を調整しましょう。
13.販路を複数持つ
自主製品の販売方法には複数の選択肢があります。
- 事業所内での販売
- 地域イベント・マルシェ
- 委託販売
- 企業への販売
- ECサイト
- SNSを活用した情報発信
販売する場所によって購入者や必要な価格帯が異なるため、同じ商品でも売れ方が変わる場合があります。
一つのイベントだけに依存すると、そのイベントがなくなったときに売上が大きく減る可能性があります。
無理のない範囲で複数の販売先を持つことも、安定した生産活動を考える方法の一つです。
14.売上と工賃を考える
自主製品がたくさん売れているように見えても、それだけで工賃向上につながっているとは限りません。
重要なのは、生産活動による収入から必要経費を差し引いた後に、どの程度の金額が残るかです。
たとえば月10万円売れていても、材料費や販売経費に8万円必要であれば、残る金額は2万円です。
一方、月7万円の売上でも必要経費が1万円であれば、残る金額は6万円になります。
自主製品ごとに売上と必要経費を確認し、どの商品が生産活動収支に貢献しているかを把握することが重要です。
15.企業と商品開発する場合
企業や地域の店舗と共同で商品を企画する方法も考えられます。
企業側が販売先や商品企画について知識を持ち、事業所側が製造や加工の一部を担当するなど、それぞれの役割を分ける方法です。
ただし、企業と連携すれば自動的に大量受注や安定した仕事につながるわけではありません。
誰が材料を準備するのか、品質基準はどうするのか、販売できなかった商品の在庫を誰が負担するのかなど、事前に条件を確認する必要があります。
販売価格や事業所へ支払われる金額についても明確にし、継続可能な条件になっているか確認しましょう。
16.モデルケース|雑貨を商品化する
ここでは、自主製品づくりをイメージするためのモデルケースを紹介します。
あるB型事業所で、布を使った小物を自主製品として販売することを検討したとします。
最初から大量に作るのではなく、まず数種類を少量試作します。
試作の中で、裁断、縫製、検品、包装などの工程を整理し、利用者がどの工程に取り組みやすいか確認します。
同時に、1個当たりの材料費と包装費を計算し、類似商品がどの程度の価格で販売されているか調べます。
その後、イベントなどで少量販売し、売れた商品、売れなかった商品、購入者からの反応を確認します。
反応が良かった商品を中心に製造し、売れにくい商品についてはデザイン、価格、販売方法などを見直します。
このように、試作・販売・確認・改善を繰り返しながら、自主製品として継続できる商品を育てていきます。
事例はモデルケースです
上記は特定事業所の商品開発実績を示すものではありません。自主製品を企画・販売する流れを分かりやすく説明するためのモデルケースです。
17.売れないときに見直すこと
自主製品が思ったように売れない場合、「もっと作れば売れる」と考える前に原因を確認します。
- 購入する人を想定できているか
- 価格が商品に合っているか
- 商品の品質は安定しているか
- パッケージで内容が伝わっているか
- 販売場所が商品に合っているか
- 似た商品との違いが分かるか
- 在庫を作りすぎていないか
商品自体を変更する必要がある場合もあれば、販売場所や価格を変更するだけで反応が変わる場合もあります。
「作ること」を目的にせず、売上や在庫の数字を確認しながら改善していくことが重要です。
18.自主製品づくりのFAQ
Q.B型では自主製品を作らなければなりませんか?
いいえ。B型事業所の生産活動は事業所によって異なります。企業から受託した作業を中心に行う事業所もあります。
Q.ハンドメイド商品なら工賃を上げやすいですか?
必ずしもそうとは限りません。販売価格だけでなく、材料費、販売数、販売手数料、在庫などによって収益は変わります。
Q.作った商品は利用者が販売するのですか?
販売方法や利用者が担当する工程は事業所によって異なります。製造のみ担当する場合もあれば、包装や販売などを担当する場合もあります。
Q.食品を自主製品として販売できますか?
食品を製造・販売することは可能ですが、商品や製造方法に応じて衛生管理、営業許可、食品表示など関係する制度への対応が必要です。
Q.ネットショップでも販売できますか?
ECサイトなどを利用して販売する方法もあります。ただし、販売手数料、送料、在庫管理、発送作業なども含めて収支を確認することが必要です。
Q.売れない商品は作り続けた方がよいですか?
販売実績や在庫を確認し、継続するか見直すことが重要です。作ること自体を目的にせず、生産活動として継続できるかを判断します。
まとめ|自主製品は作るだけでなく売れる仕組みまで考える
B型事業所の自主製品づくりでは、商品を製作することだけでなく、企画から販売まで多くの工程を仕事として考えることができます。
- 自主製品は事業所が企画・製造・販売する商品
- 製作以外にも検品・包装・在庫管理などの仕事がある
- 障害名だけで担当工程を決めない
- 最初は少量を試作して販売する
- 材料費などの原価を把握する
- 安すぎる価格設定にも注意する
- 商品として品質を安定させる
- 売れ行きに合わせて在庫量を調整する
- 売上ではなく必要経費を差し引いた金額を見る
- 販売状況を確認しながら商品を改善する
自主製品づくりで大切なのは、「利用者が作れる商品」を増やすことだけではありません。
誰が購入するのか、どの程度の価格なら選ばれるのか、製造にいくらかかるのか、継続して販売できるのかまで考える必要があります。
また、一つの商品を細かな工程に分けることで、製作だけではなく、検品、包装、写真撮影、在庫管理などさまざまな仕事を作れる可能性があります。
利用者への支援として意味があり、生産活動としても収益を確保できる商品を少しずつ育てていくことが、持続可能な自主製品づくりにつながります。
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