就労継続支援B型の工賃について、給料との違い、決め方、計算方法、時給の考え方をわかりやすく解説します。令和6年度の全国平均工賃月額や地域別の実績、A型との違い、工賃アップにつながる事業所の取り組み、報酬改定のポイントまで詳しく紹介します。
1. 就労継続支援B型とは?障害者のための福祉サービスの概要を徹底解説
就労継続支援B型は、一般企業で働くことに不安や難しさがある方が、職員の支援を受けながら作業に取り組める福祉サービスです。毎日決まった時間に働くことが難しい方や、体調を見ながら少しずつ仕事に慣れていきたい方などが利用しています。
作業内容は事業所によってさまざまです。商品の袋詰めやシール貼り、清掃、農作業、食品の加工補助、パソコンを使った入力作業など、それぞれの事業所が地域や企業と連携しながら仕事を用意しています。
B型事業所の役割は、作業の場を提供することだけではありません。定期的に通うことで生活リズムを整えたり、職員に体調や困りごとを相談したりしながら、無理なく作業を続けられるよう支援します。利用日数や作業時間についても、本人の体調や希望に合わせて相談できます。
就労継続支援B型では、原則として事業所と雇用契約を結びません。そのため、作業によって受け取るお金は「給料」ではなく「工賃」と呼ばれます。工賃額は、利用した日数や作業時間だけで決まるものではありません。事業所が行う生産活動の売上や、材料費などの必要経費によっても変わるため、事業所ごとに金額に差があります。
1-1. 就労継続支援B型の対象や利用条件をわかりやすく紹介
就労継続支援B型は、一般企業や就労継続支援A型で働くことが難しく、職員の支援を受けながら作業を続けたい方が利用する福祉サービスです。利用できるかどうかは、年齢や障害名だけで決まるわけではありません。現在の体調やこれまでの就労経験、日常生活の様子などを確認しながら判断されます。
たとえば、以前は働いていたものの、年齢や体力の変化によって一般就労を続けることが難しくなった方が利用しています。就労移行支援を利用したものの就職に結びつかなかった方や、体調を整えながら少しずつ作業に慣れていきたい方も対象です。
利用を希望する場合は、まず市区町村の障害福祉担当窓口や相談支援事業所に相談します。その後、本人の希望や生活状況に合わせてサービス等利用計画を作成し、市区町村から支給決定を受けると、障害福祉サービス受給者証が交付されます。
事業所を選ぶときは、作業内容や工賃だけで決めないことも大切です。無理なく通える場所か、職員に体調や困りごとを相談しやすいか、利用時間や送迎の有無が自分に合っているかなども確認しましょう。見学や体験利用ができる場合は、実際の雰囲気を確かめてから選ぶと安心です。
1-2. 就労継続支援B型とA型の違い、サービスの特徴や支援内容を比較
A型とB型を比べるとき、まず確認したいのが雇用契約を結ぶかどうかです。A型は、事業所と雇用契約を結んで働くサービスです。労働者として勤務するため、原則として最低賃金以上の賃金が支払われます。
B型では、事業所と雇用契約を結びません。作業や生産活動に取り組んだ対価として受け取るお金は、賃金ではなく工賃と呼ばれます。そのため、最低賃金がそのまま適用される仕組みではありません。
働き方にも違いがあります。A型では、雇用契約で決められた勤務日数や時間に沿って働くことが基本です。ある程度安定して通所でき、決められた仕事を継続して行えることが求められます。
B型は、体調に波がある方や、長い時間働くことが難しい方でも利用しやすいサービスです。週に数日から始めたり、短い時間だけ作業したりするなど、本人の状態に合わせて利用方法を相談できます。
支援の内容も同じではありません。A型では、仕事を続けるための職業指導や勤務管理が行われます。B型では作業の支援に加えて、生活リズムや体調、通所に関する困りごとを職員に相談しながら利用できます。 A型とB型のどちらが合っているかは、収入の金額だけでは決められません。決められた時間に安定して働けるか、体調に合わせた調整が必要か、どのような支援を受けたいかを考えて選ぶことが大切です。

2. 就労継続支援B型の工賃(賃金)とは?給料との違いと決定方法を解説
就労継続支援B型では、利用者が作業に取り組んだ対価として「工賃」を受け取ります。一般企業で働いたときに支払われる給料とは、仕組みが異なります。
B型事業所で行われている作業はさまざまです。商品の製造や袋詰め、清掃、企業先で作業する施設外就労、パソコンを使ったデータ入力などがあります。こうした仕事によって得た売上が、そのまま利用者の工賃になるわけではありません。材料費や商品の仕入れにかかった費用、販売手数料などを差し引き、残った金額が工賃の原資になります。
一般企業や就労継続支援A型では、雇用契約を結んで働き、その対価として賃金を受け取ります。B型は原則として雇用契約を結ばないため、利用者に支払われるのは賃金ではなく工賃です。最低賃金法も原則として適用されないため、工賃に最低賃金と同じ金額が保証されているわけではありません。
工賃の決め方は、すべての事業所で同じではありません。利用した日数や作業時間をもとに計算する事業所もあれば、作業量や担当した仕事の内容を反映する事業所もあります。具体的な計算方法や支払日は、各事業所が定める工賃規程などで確認できます。
ただし、工賃を上げることだけがB型事業所の目的ではありません。体調に波がある方や多くの支援を必要とする方にも、無理なく作業へ参加できる環境を整える必要があります。事業所は工賃の計算基準を利用者にわかりやすく説明し、決められた基準に沿って公平に支払うことが大切です。
2-1. 工賃(賃金)支払の基本ルールと算定基準の徹底ガイド
就労継続支援B型では、利用者が取り組んだ作業によって売上が生まれます。ただし、その売上がすべて工賃として支払われるわけではありません。材料の購入費や商品の仕入れ代、梱包費、販売手数料など、作業にかかった費用を差し引き、残った金額が工賃の原資になります。
厚生労働省の会計運用に関するガイドラインでも、作業による売上と、作業に必要となった経費を分けて管理することが示されています。事業所は、どの仕事でいくら売上があり、どの程度の費用がかかったのかを記録し、工賃として支払える金額を把握しなければなりません。
たとえば、商品の販売による1か月の売上が50万円で、材料費や仕入れ代、販売手数料などに20万円かかったとします。この場合、差額の30万円が利用者へ工賃を支払うための原資です。ただし、30万円を利用者一人ひとりへどのように配分するかは、利用人数や作業時間、作業量、事業所が定める工賃規程によって変わります。
工賃の計算方法も事業所ごとに異なります。利用日数をもとに支払う日額方式、作業時間に応じて計算する時間額方式、完成した数量や件数に応じて支払う出来高方式などがあります。複数の方法を組み合わせて計算している事業所もあります。
利用者が安心して作業に取り組むためには、工賃の計算方法を事前に確認できることが大切です。事業所は、工賃をどのような基準で計算するのか、いつ支払うのか、差し引かれる費用があるのかを利用者や家族へ説明します。また、障害福祉サービスの運営に関する会計と、生産活動に関する会計を分け、工賃の原資が分かるように管理する必要があります。
2-2. 工賃の計算方法や実績報告の流れを具体的に紹介
工賃の計算方法は、すべての就労継続支援B型事業所で同じではありません。作業した時間をもとに計算する事業所もあれば、利用日数や作業量に応じて金額を決める事業所もあります。
たとえば、工賃を1時間300円としている事業所で、1日4時間、月15日作業した場合は、「300円×4時間×15日」で月1万8,000円です。1日当たり1,000円の日額方式で月15日利用した場合は、月1万5,000円となります。
商品の袋詰めを何個行ったか、入力作業を何件終えたかなど、完成した数量や件数をもとに計算する出来高方式もあります。時間額と出来高を組み合わせるなど、事業所独自の方法を採用している場合もあるため、利用前に工賃規程を確認しておくと安心です。
ここで注意したいのは、利用者一人ひとりに支払う工賃と、行政へ報告する平均工賃月額は、同じ方法で計算するものではないという点です。平均工賃月額を出すときは、まず対象年度に利用者へ支払った工賃の合計額を確認します。その金額を、開所1日当たりの平均利用者数と開所月数で割って計算します。
式にすると、「年間工賃総額÷開所1日当たりの平均利用者数÷開所月数」です。ただし、行政の通知や報酬改定によって算定方法が見直される場合があるため、報告する年度の最新ルールを確認する必要があります。
年度が終わると、事業所は1年間に支払った工賃や利用者数、生産活動の状況をまとめ、都道府県などへ報告します。集められた情報は国で集計され、全国や都道府県ごとの平均工賃実績として公表されます。公表された数字は、地域や事業所の工賃水準を確認する際の目安になります。
3. 令和6年度の就労継続支援B型の平均工賃月額と過去実績の比較
厚生労働省の集計によると、令和6年度における就労継続支援B型の全国平均工賃月額は2万4,141円でした。令和5年度の2万2,649円から1,492円増えており、前年度を上回る結果となっています。この数字は、全国1万8,245か所のB型事業所を対象に集計されたものです。
これまでの推移を見ると、平成24年度の平均工賃月額は1万4,190円でした。平成30年度には1万6,118円、令和元年度には1万6,371円となり、その後も多少の増減を繰り返しながら推移しています。令和2年度は1万5,776円、令和3年度は1万6,507円、令和4年度は1万7,031円でした。
令和5年度には2万2,649円まで上昇し、令和6年度はさらに2万4,141円となっています。数字だけを見ると、令和4年度から令和5年度にかけて工賃が大きく伸びたように見えます。
ただし、ここで確認しておきたいのが平均工賃月額の算定方法です。令和5年度実績から計算方法が見直されているため、令和4年度以前の金額と、その後の金額を同じ条件で比べることはできません。工賃の実態を確認する際は、金額の増減だけでなく、どのような方法で算出された数字なのかも見る必要があります。
また、全国平均が2万4,141円だからといって、すべての利用者が毎月同じ金額を受け取れるわけではありません。実際の工賃は、利用日数や作業時間、担当する仕事、事業所の生産活動による売上などによって変わります。全国平均は、あくまで工賃水準を知るための一つの目安として見ることが大切です。
3-1. 全国・地域別の事業所ごとの工賃実績一覧と大阪府の向上計画
就労継続支援B型で受け取れる工賃は、地域や事業所によって差があります。事業所ごとに取り扱う仕事や受注単価が異なり、商品の販売状況や施設外就労の有無によっても、生産活動による売上が変わるためです。
全国平均工賃月額は、全国的な工賃水準を知るための参考にはなります。ただし、実際に受け取れる金額は事業所ごとに異なります。利用先を探すときは、平均額だけでなく、その事業所の過去の工賃実績や計算方法、作業時間についても確認しておきましょう。
大阪府が公表した令和6年度の就労継続支援B型の平均工賃月額は、1万9,747円でした。この調査では、府内の就労継続支援B型1,976事業所が対象となっています。市町村別と事業所別の結果も大阪府の公式サイトで公表されています。
ただし、1万9,747円は大阪府内の対象事業所をまとめて算出した平均です。すべての利用者が毎月同じ金額を受け取っているわけではありません。実際の工賃は、通所した日数や作業時間、担当する仕事、事業所の売上や工賃規程によって変わります。
大阪府は、令和6年度から令和8年度までの工賃向上計画も策定しています。令和7年3月に改定された計画では、目標工賃月額を令和6年度1万9,000円、令和7年度2万円、令和8年度2万1,000円としています。令和5年度の府内平均工賃月額1万8,176円を基準に、毎年およそ5%ずつ引き上げる考え方です。
工賃向上に向けて、大阪府では事業所へのコンサルタント派遣や研修、共同受注の促進、官公庁による優先調達、福祉製品の販路拡大などを進めています。目標額を設定するだけでなく、事業所が仕事を確保し、継続的に売上を伸ばせるよう支援することが計画の柱となっています。
3-2. 工賃向上のための行政・事業所の取り組みや支援方法
就労継続支援B型の工賃を上げるには、事業所だけの努力では限界があります。安定した仕事を確保するには、企業や自治体とのつながりが必要になるためです。国や都道府県では、事業所の計画づくりや商品開発、受注先の開拓などを支援しています。
大阪府では、就労継続支援B型事業所に対し、令和6年度から令和8年度までの各年度の目標工賃月額と、工賃向上に向けた具体的な方策を盛り込んだ「事業所工賃向上計画」の作成・提出を求めています。計画は一度作って終わりではありません。前年度の実績を確認し、目標との差や取り組みの進み具合を見ながら、必要に応じて内容を見直します。
大阪府が行う支援には、専門家やコンサルタントによる訪問支援があります。事業所の状況に合わせて、経営の見直し、商品の付加価値向上、受注単価の改善などについて助言を受けられる仕組みです。また、複数の事業所がまとまって仕事を受ける共同受注窓口の運営や、官公庁が障害者就労施設へ優先的に発注する取り組みも進められています。
自主製品の販売支援も行われています。大阪府では、府内の障害福祉施設で作られた製品を「こさえたん」として紹介し、府庁舎内のアンテナショップや販売イベント、SNSなどを通じて販路を広げています。農家と福祉事業所をつなぎ、農作業の受注につなげる農福連携も工賃向上策の一つです。
事業所側では、まず作業ごとの売上と経費を確認することが出発点になります。売上が多くても、材料費や販売手数料が高ければ、工賃として配分できる金額は増えません。既存の仕事の単価を見直す、新しい取引先へ営業する、自主製品の価格や販売方法を改善するといった取り組みを、数字を見ながら進める必要があります。
ただし、工賃を上げるために、利用者へ無理な作業量や長時間の利用を求めることは適切ではありません。作業の手順を分かりやすくしたり、道具を工夫したりすることで、負担を増やさずに生産性を高められる場合もあります。本人の体調や得意なことを確認しながら、安心して続けられる仕事を増やしていくことが大切です。

4. 工賃アップのポイント!収入を上げるために必要な工夫と職員指導
就労工賃を上げるために、利用者の作業時間を増やせばよいとは限りません。長く作業しても、受注単価が低かったり、材料費が多くかかったりすれば、工賃として配分できる金額はなかなか増えないためです。
はじめに確認したいのは、どの仕事で利益が出ているかです。作業ごとに売上を分け、材料費や仕入れ代、販売手数料などを差し引いて、実際にいくら残るのかを見ます。売上が多く見える仕事でも、経費や作業時間を含めて考えると、利益がほとんど残っていない場合があります。
利益が少ない作業は、そのまま続けるのではなく、取引先に単価の見直しを相談したり、作業工程を減らして時間を短縮したりします。毎月安定して受注できる仕事を増やすことも大切です。それでも収益が見込めない場合は、別の仕事へ切り替えることも検討します。
自主製品の場合は、品質だけでなく、購入する人の立場から見直す必要があります。価格は買いやすいか、パッケージは手に取りやすいか、商品に合った場所で販売できているかを確認します。販売会だけに頼らず、インターネットや地域の店舗を活用する方法もあります。
職員には、利用者への作業支援に加えて、仕事を受注するための営業や、作業にかかる費用を把握する役割もあります。ただし、一人の職員にすべてを任せるのではなく、営業が得意な職員、作業手順を考える職員、品質を確認する職員など、役割を分けたほうが進めやすくなります。
工賃アップは、利用者へ無理を求めて進めるものではありません。作業台の高さを調整する、完成見本を置く、作業工程を細かく分ける、専用の治具を用意するといった工夫で、負担を増やさずに作業しやすくなることがあります。利用者が得意な作業を担当し、安心して続けられる環境を整えることが、結果として生産性や工賃の向上につながります。書を活用して、利用者が無理なく能力を発揮できる環境を整えることが大切です。
4-1. 就労継続支援B型の工賃改善をめざすための計画策定と運営管理
工賃向上計画は、目標額を書いて提出するだけの書類ではありません。現在の工賃実績や作業の収支を確認し、何を変えれば工賃を上げられるのかを事業所内で考えるためのものです。
大阪府では、就労継続支援B型事業所に対し、令和6年度から令和8年度までの目標工賃月額と、工賃向上に向けた具体的な取り組みを記載した事業所工賃向上計画の作成・提出を求めています。前年度の実績を確認し、目標の達成状況を点検したうえで、必要があれば計画を見直します。
計画を作るときは、まず現在の平均工賃月額を確認します。あわせて、作業による売上から材料費や販売手数料などを差し引き、工賃へ回せる金額が年間でどれくらいあるのかを調べます。
たとえば、利用者10人の平均工賃を月2万円から2万2,000円に上げる場合、毎月2万円、年間では24万円の工賃原資を新たに確保しなければなりません。不足する金額が分かったら、既存の仕事の単価を見直すのか、新しい取引先を増やすのか、自主製品の販売数を伸ばすのかを決めます。
計画を実行した後は、毎月の売上と経費を確認します。売上が増えていても、材料費や作業時間が大きく増えていれば、工賃へ回せる金額は増えません。納期遅れや不良品、やり直しが増えていないか、特定の職員に仕事が集中していないかも見ておく必要があります。
予定どおりに進まないときは、目標を下げて終わらせるのではなく、原因を確認します。受注数が不足しているのか、単価が低いのか、作業工程に時間がかかりすぎているのかによって、見直す内容は変わります。
工賃の計算方法や計画の変更点は、利用者や家族にも分かる言葉で説明します。工賃を上げるために利用者へ無理な作業を求めるのではなく、体調や得意なことに合わせて作業しやすい環境を整えながら進めることが大切です。
5. 令和6年度報酬改定の主なポイントと最新動向を詳しく解説
令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定では、就労継続支援B型の工賃実績が、基本報酬へこれまで以上に反映されるようになりました。平均工賃月額に応じた区分が見直され、工賃実績の違いをより細かく評価する仕組みとなっています。([厚生労働省][5])
基本報酬の区分では、平均工賃月額が高い事業所を評価する段階が細かく設定されました。反対に、平均工賃月額が低い区分では報酬単価が見直されています。事業所にとっては、工賃実績が今後の収入にこれまで以上に影響する改定といえます。
職員配置に関する変更もあります。従来の人員配置区分に加えて、利用者6人に対して職業指導員と生活支援員を1人以上配置する「6対1」の基本報酬区分が設けられました。職員を手厚く配置し、利用者への支援を充実させている事業所を報酬面で評価する仕組みです。
新たに設けられた「目標工賃達成加算」も、今回の改定で注目される点です。対象となる基本報酬区分や職員配置などの要件を満たし、設定した目標工賃を達成した事業所が評価されます。工賃を上げるための計画を立て、実際の成果につなげた事業所へ加算する考え方です。
ただし、工賃実績だけで事業所の支援内容を判断することはできません。利用者の中には、体調が安定しない方や、短時間の作業から始める必要がある方、職員による手厚い支援を必要とする方もいます。
工賃を上げやすい作業や利用者だけが優先されると、支援の必要性が高い方が利用しにくくなるおそれがあります。事業所には、工賃向上へ取り組む一方で、利用者一人ひとりの体調や障害特性に合わせた支援を続ける姿勢が必要です。報酬区分だけを追うのではなく、工賃と支援の質の両方を確認しながら運営することが大切です。
5-1. 就労系障害福祉サービスにおける改定事項や今後の検討項目
令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定では、就労継続支援B型だけでなく、A型や就労移行支援、就労定着支援についても評価方法が見直されました。就労系サービスを利用する方の希望や状態に合った支援を行い、一般就労や職場定着につなげることが改定全体の方向性となっています。
就労継続支援A型では、事業所の運営状況を評価するスコア方式の一部が変更されました。労働時間や生産活動の収支など、事業所の取り組みをどのように報酬へ反映するかが見直されています。B型では、平均工賃月額に応じた基本報酬の区分が細かくなり、工賃実績が報酬へ反映されやすい仕組みになりました。
就労系サービスに関する大きな変化の一つが、「就労選択支援」の開始です。就労選択支援は令和7年10月1日から始まった障害福祉サービスで、本人が自分に合った就労先や働き方を選べるよう支援します。
支援では、本人への聞き取りや作業場面の確認などを通じて、働くうえでの希望、得意なこと、必要な配慮を整理します。その結果を、一般企業への就職、就労移行支援、A型、B型などの選択肢を考える材料にします。令和7年10月以降、新たにB型を利用する場合は、原則として事前に就労選択支援を利用する取り扱いが始まっています。ただし、対象者や経過措置には例外があるため、個別の確認が必要です。
こうした制度の変化により、B型事業所には工賃を上げる取り組みだけでなく、利用者の希望や適性を踏まえた支援がこれまで以上に求められます。工賃実績が高くても、本人が無理をしていたり、必要な支援を受けられていなかったりすれば、よいサービスとはいえません。作業による売上と経費を確認しながら、利用者が安心して通える環境を整えることも事業所の役割です。
今後の制度見直しに向けては、B型事業所の工賃水準、経営状況、事業所数の増加、工賃向上計画の実効性などが検討材料になる可能性があります。実際に、関係団体からは工賃の最低基準や計画未作成事業所への対応に関する意見も出されています。ただし、提出された意見がそのまま制度になるわけではありません。
報酬改定や利用条件を確認するときは、検討中の要望と、すでに施行された制度を分けて見ることが大切です。厚生労働省の改定資料やQ&Aに加え、大阪府や指定権者が発出する最新の通知も確認しましょう。

6. 就労継続支援B型の利用メリット・デメリットと今後の課題
就労継続支援B型では、本人の体調や生活状況に合わせて、利用日数や作業時間を相談できます。週に数日から始めたり、短い時間だけ作業したりできるため、毎日決まった時間に働くことが難しい方でも利用しやすいサービスです。
定期的に事業所へ通うことで、起床や食事の時間が整い、生活に一定のリズムが生まれることもあります。自宅以外で過ごす時間が増え、職員やほかの利用者と関わる機会にもなります。作業中に困ったことがあれば職員へ相談できるため、一人で仕事を進めることに不安がある方にも安心感があります。
本人のペースで作業経験を積めることもB型の利点です。最初は簡単な作業から始め、慣れてきたら作業時間を延ばしたり、別の仕事に挑戦したりできます。一般就労やA型への移行を目指す方だけでなく、B型で長く安定して働きたい方も利用しています。
利用を考えるうえで、工賃の金額は確認しておきたい点です。令和6年度の全国平均工賃月額は2万4,141円ですが、すべての利用者が毎月この金額を受け取れるわけではありません。実際の工賃は、通所した日数や作業時間、担当する仕事、事業所の売上によって変わります。
一般企業の給料と比べると、B型の工賃は低いのが実情です。工賃だけで家賃や食費などの生活費をすべて支払うことは難しく、障害年金や各種手当、家族からの支援などと組み合わせて生活している方もいます。事業所を選ぶときは、平均工賃だけでなく、実際の支給例や計算方法も確認しておくと安心です。
工賃を上げることは大切ですが、そのために利用者の作業量や利用時間を一律に増やすことは適切ではありません。体調に波がある方へ無理を求めれば、通所を続けられなくなる可能性があります。本人が得意な作業を担当できるようにしたり、作業手順を分かりやすくしたりすることで、負担を増やさずに生産性を高める工夫が必要です。
B型事業所の良し悪しは、工賃額だけでは判断できません。本人に合う作業が用意されているか、体調について相談しやすいか、無理なく通い続けられているかも大切なポイントです。
事業所の運営面では、材料費の上昇や仕事量の変化にも対応しなければなりません。一つの取引先だけに頼らず、複数の仕事を確保することや、必要に応じて受注単価や自主製品の価格を見直すことも課題となります。利用者が安心して働ける環境を守りながら、安定した工賃を支払える仕組みを作ることが今後のB型事業所に求められます。
7. 就労継続支援B型の工賃を理解するためのまとめ・今後の展望
就労継続支援B型で受け取る工賃は、一般企業の給料とは仕組みが異なります。B型では原則として雇用契約を結ばず、利用者が作業に取り組んだ対価として工賃を受け取ります。
工賃のもとになるのは、商品の販売や企業から受けた仕事によって得た売上です。そこから材料費や仕入れ代、販売手数料などを差し引き、残った金額を利用者へ配分します。事業所によって仕事の内容や売上が違うため、工賃の金額や計算方法も同じではありません。時間額で計算するところもあれば、利用日数や作業量をもとに決めるところもあります。
令和6年度の全国平均工賃月額は2万4,141円でした。前年度より増えていますが、令和5年度実績から算定方法が変わっているため、令和4年度以前の数字とは同じ条件で比較できません。
また、全国平均が2万4,141円だからといって、すべての利用者が毎月その金額を受け取れるわけではありません。実際の工賃は、通所した日数や作業時間、担当した仕事、事業所の売上によって変わります。事業所を選ぶときは、平均工賃だけでなく、計算方法や実際の支給例も確認しておくと安心です。
今後、工賃を安定して上げていくには、企業から継続して仕事を受けられる関係をつくり、作業内容に見合った単価を確保する必要があります。自主製品を扱う事業所では、価格やパッケージ、販売方法を見直し、売上につながる商品づくりを進めることも欠かせません。
ただし、工賃を上げるために、利用者へ無理な作業量や長時間の利用を求めることは適切ではありません。本人の体調や希望、得意な作業を確認しながら、安心して続けられる仕事を増やしていくことが大切です。 就労継続支援B型を利用するときは、工賃の高さだけで判断せず、職員へ相談しやすいか、自分に合う作業があるか、無理なく通い続けられるかも確認しましょう。工賃と支援内容の両方を見たうえで、自分に合う事業所を選ぶことが大切です。

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