障害福祉サービスを利用するとき、「アセスメント」という言葉を聞くことがあります。「何を確認されるの?」「できないことを評価されるの?」「就労支援ではどこを見られるの?」と不安に感じる方もいるかもしれません。
障害福祉におけるアセスメントは、本人のできる・できないを一方的に判定するためのものではありません。本人の希望や生活状況、得意なこと、苦手なこと、作業中の様子、必要な配慮などを整理し、その人に合った支援や働き方を考えるために行うものです。
特に就労継続支援A型・B型などの就労支援では、作業能力だけではなく、体調や生活リズム、通所状況、コミュニケーション、働き方の希望などを幅広く確認します。
この記事では、障害福祉におけるアセスメントの意味から、就労支援で確認する項目、具体的な進め方、個別支援計画への活かし方、支援記録で活用されるSOAP・POS、就労選択支援との関係まで分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- 障害福祉におけるアセスメントの意味
- 就労支援で確認する主な項目
- アセスメントの具体的な進め方
- 個別支援計画や支援記録への活かし方
- SOAP・POSの考え方と記録例
- 就労選択支援とアセスメントの関係
目次
1.障害福祉のアセスメントとは
障害福祉におけるアセスメントとは、本人の現在の状態や希望、生活環境、得意なこと、困っていることなどについて情報を集め、必要な支援を整理する過程です。
就労支援の場合も、「作業ができるかどうか」だけを見るものではありません。どのような働き方を希望しているのか、どのような環境なら力を発揮しやすいのか、安定して通所・就労するためにどのような配慮が必要なのかまで確認します。
1-1.できないことを探す評価ではない
アセスメントという言葉から、「能力を評価される」「苦手なところを探される」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、障害福祉のアセスメントで大切なのは、本人を「できる・できない」だけで分けることではありません。
例えば、一人では難しい作業でも、写真付きの手順書があれば取り組めることがあります。口頭で複数の指示を受けることは苦手でも、一つずつ具体的に伝えれば正確に作業できる方もいます。
長時間続けて作業するとミスが増える場合でも、30分ごとに休憩を取ることで安定することがあります。
ポイント
「何ができないか」だけではなく、「どのような環境・方法・支援があればできるのか」まで確認することが、就労支援のアセスメントでは大切です。
1-2.本人の希望を支援の出発点にする
支援者が必要だと考えていることと、本人が希望していることが同じとは限りません。
例えば、支援者から見ると作業速度を上げることが課題に見えていても、本人は「まず週3日休まず通えるようになりたい」と考えている場合があります。
反対に、現在の作業は安定していても、「将来は一般就労したい」「違う仕事も経験してみたい」という希望を持っている場合もあります。
そのため、アセスメントでは本人がどのような生活や働き方を希望しているのかを確認し、本人の希望と現在の状況を照らし合わせながら支援の方向性を考えます。

2.就労支援で確認する主な項目
障がい者就労支援のアセスメントでは、仕事や作業に関する能力だけでなく、生活状況や体調、コミュニケーション、本人の希望などを幅広く確認します。
働き続けるためには、作業能力だけでなく、生活リズムや通勤・通所、周囲との関わり方など、さまざまな要素が関係するためです。
2-1.生活・作業・コミュニケーションを見る
就労支援では、主に次のような内容を確認します。
- 本人の希望:希望する仕事、利用日数、勤務時間、将来の働き方
- 生活状況:睡眠、起床時間、食事、通院、服薬、生活リズム
- 体調:疲れやすさ、体調の波、休憩の必要性
- 通所・通勤:交通手段、移動時間、一人での移動が可能か
- 作業理解:指示の理解、手順の把握、質問のしやすさ
- 作業面:正確さ、速度、集中時間、継続できる時間
- 得意なこと:好きな作業、得意な工程、力を発揮しやすい状況
- コミュニケーション:報告・連絡・相談、他者との関わり方
- 必要な配慮:指示方法、作業場所、休憩、勤務時間など
例えば作業速度がゆっくりでも、非常に丁寧でミスが少ない方もいます。単調な作業では集中しにくくても、工程に変化がある作業では力を発揮する方もいます。
一つの項目だけで判断せず、本人の特徴を多面的に確認することが必要です。
2-2.本人と環境の組み合わせを確認する
同じ人でも、作業環境や支援方法が変われば結果が変わることがあります。
例えば「集中が続かない」という場合でも、周囲の話し声が多い場所で集中しにくいのか、作業時間が長くなると疲れるのか、作業手順が分かりにくいのかによって必要な支援は異なります。
「コミュニケーションが苦手」という評価についても同じです。
「複数人から同時に指示されると混乱する」「自分から質問することが難しい」「急な予定変更があると不安が強くなる」など、実際の場面まで具体的に整理します。
その結果、「指示する職員をできるだけ統一する」「一度に一つずつ伝える」「予定変更は早めに知らせる」といった具体的な配慮につなげることができます。
3.アセスメントの進め方
アセスメントは、一度の面談や検査だけで完結するものではありません。本人との面談、実際の作業場面、日々の支援記録、必要に応じて関係機関から得られる情報などを組み合わせて整理します。
3-1.面談と作業場面から情報を集める
本人との面談では、現在困っていることや希望している働き方などを確認します。
ただし、「どんな仕事がしたいですか?」という質問だけでは、本人も答えにくいことがあります。
その場合は、「一人で進める作業と複数人でする作業ならどちらがやりやすいですか?」「午前と午後ではどちらの方が体調が安定していますか?」など、具体的な場面を示しながら聞く方法があります。
本人が言葉で説明することが難しい場合には、実際にいくつかの作業を体験してもらい、その様子を確認することも一つの方法です。
作業場面では、「集中力がない」といった抽象的な評価ではなく、できるだけ具体的な事実を確認します。
例えば、「30分程度は安定して作業できるが、それ以降は確認回数が増える」「周囲で会話が増えると手が止まりやすい」と記録すれば、休憩時間や作業環境の調整につなげやすくなります。
3-2.一度の結果だけで判断しない
体調や集中力、作業状況は毎日同じとは限りません。
ある日にできなかったからといって「できない」と決めてしまうと、本来の力を正確に把握できないことがあります。
反対に、一度うまくできたからといって、いつでも一人でできるとは限りません。
- 日による違い
- 午前・午後など時間帯による違い
- 体調による違い
- 作業内容による違い
- 周囲の環境による違い
- 支援方法による違い
こうした変化を継続して確認することで、本人が安定して力を発揮できる条件が見えやすくなります。

4.個別支援計画への活かし方
アセスメントは情報を集めること自体が目的ではありません。確認した内容を、個別支援計画や実際の支援につなげることが重要です。
4-1.強み・課題・必要な支援を整理する
例えば、作業中に何度も職員へ確認する利用者がいるとします。
これを単に「一人で作業できない」と評価するだけでは、支援方法につながりません。
- 強み:間違えないよう慎重に確認できている
- 現在の課題:自分の判断に自信がなく、次の工程へ進みにくい
- 必要な支援:完成例や確認表を用意し、自分で判断できる基準を明確にする
このように整理することで、本人の行動を単なる「問題」として捉えるのではなく、その背景を考えながら具体的な支援方法へつなげることができます。
個別支援計画を作成する際も、本人の希望と現在の状態を確認することが大切です。
例えば本人が「週5日働けるようになりたい」と希望していても、現在は週2日の利用後に強い疲労が見られる場合があります。その場合は、いきなり週5日を目指すのではなく、「まず週3日の安定した通所を目指す」など、段階的な目標を本人と相談しながら設定する方法があります。
4-2.モニタリングで見直す
支援を始めた後は、計画した内容が本人に合っているかを確認します。
- 利用日数は安定しているか
- 作業できる時間に変化があるか
- 本人の希望が変化していないか
- 必要な配慮は現在も合っているか
- 新しい得意なことが見つかっていないか
- 支援方法によって改善した点があるか
状況が変われば、アセスメント内容や個別支援計画も必要に応じて見直します。
支援の基本的な流れ
アセスメント → 個別支援計画 → 支援 → 記録 → モニタリング → 再アセスメント
この流れを繰り返しながら、現在の本人に合った支援へ調整していきます。
5.SOAP・POSを支援記録に活かす
アセスメントの精度を高めるためには、日々の支援記録も大切です。支援記録の整理方法として、医療や福祉の現場などで使われているSOAPがあります。
5-1.SOAPの基本と記録例
SOAPは、情報を次の4つに分けて整理する方法です。
- S:Subjective(主観的情報) 本人の発言や訴え、本人が感じていること
- O:Objective(客観的情報) 職員が実際に確認した事実や行動
- A:Assessment(評価・分析) SとOを踏まえた支援者の考察
- P:Plan(計画) 次に行う支援や対応
例えば、就労継続支援事業所での作業場面をSOAP形式で整理すると、次のようになります。
S:「今日は少し眠いけれど、作業はできます」と本人より発言あり。
O:午前中の袋詰め作業を40分継続。30分頃から確認回数が増え、作業速度が低下した。
A:疲労の影響も考えられ、長時間連続して作業すると集中力が低下する可能性がある。
P:午後は30分を目安に休憩を入れ、作業状況を確認する。
「今日は調子が悪そうだった」という記録だけでは、他の職員が状況を正確に把握することが難しくなります。
本人の発言、実際に確認した事実、支援者の考察、次に行う支援を分けて記録することで、なぜその支援を行うのかが分かりやすくなります。
特に注意したいのが、事実と評価を混同しないことです。
例えば「やる気がなかった」という表現には支援者の解釈が含まれています。
「作業開始後10分間で3回手が止まり、職員が声をかけると『今日は集中しにくい』との発言があった」と記録すれば、実際に確認した状況が伝わります。
そのうえで、「体調や作業環境による影響を確認する必要がある」と評価すれば、次の支援につながる記録になります。
5-2.POSとSOAPの関係
POSは「Problem-Oriented System(問題志向型システム)」と呼ばれ、本人が抱えている課題や支援上のテーマを整理し、それぞれに必要な情報や支援方針、経過を管理していく考え方です。
元の記事では「SOAPは日々の記録、POSは長期的な管理」と分けていましたが、実際には両者を単純に短期・長期で区別するものではありません。
POSという課題を中心に情報を整理する考え方の中で、経過をSOAP形式で記録することもあります。
例えば、「分からない作業があっても、自分から職員へ質問しにくい」という支援上のテーマを整理し、その日の具体的な状況や対応をSOAP形式で記録していくと、支援の経過を追いやすくなります。
重要なのは記録様式そのものではなく、「何が起きたのか」「本人はどう感じたのか」「支援者はどう考えたのか」「次に何をするのか」が、他の職員にも分かる状態にすることです。
6.就労選択支援とアセスメント
障害福祉の就労支援では、2025年10月から「就労選択支援」が始まり、本人が自分に合った働き方を考えるためのアセスメントが、制度上も重要な位置づけになっています。
就労選択支援は、本人の希望や就労能力、適性などに合った働き方や就労系障害福祉サービスの選択を支援するサービスです。
厚生労働省が示す就労選択支援の流れでは、作業場面等を活用した状況把握として、本人や家族・関係者との面談、基礎情報の確認、模擬作業などの作業観察を行い、アセスメント結果を整理します。
さらに、相談支援専門員や就労支援関係者などによるケース会議、アセスメントシートの作成、本人へのフィードバック、必要な関係機関との連絡調整などを行います。
アセスメント方法も一つに限定されているわけではなく、厚生労働省の実施マニュアルでは、面談、標準化検査、職務分析、ワークサンプル、模擬的就労場面、職場実習などが示されています。
大切なのは、一つの検査や短時間の作業結果だけで働き方を決めることではありません。本人とのやり取りや実際の作業場面などから情報を整理し、本人自身が今後の働き方を考える材料として活用することです。
就労継続支援B型を検討している方へ
2025年10月の就労選択支援開始に伴い、就労継続支援B型の利用対象についても制度上の取扱いが変わっています。ただし、就労経験や本人の状況、地域の提供体制などによって取扱いが異なる場合があります。実際の利用手続きについては、お住まいの市区町村や相談支援事業所、利用を検討している事業所へ確認してください。
就労継続支援A型・B型など各サービスの違いを知りたい方は、障害福祉サービスの比較ページも参考にしてください。

7.アセスメントのよくある質問
Q.アセスメントでうまく答えられなくても大丈夫ですか?
はい。すべての質問にその場で答えられなくても問題ありません。
「どんな仕事が向いているか分からない」「自分の苦手なことをうまく説明できない」という方もいます。面談だけで決めるのではなく、実際の作業や日々の様子を確認しながら整理していくことができます。
Q.苦手なことも伝えた方がよいですか?
働くうえで必要な配慮につながる内容は、伝えておくことで支援方法を考えやすくなります。
「大きな音が続くと集中しにくい」「疲れてくるとミスが増える」「一度に複数の指示を受けると混乱する」など、困りやすい場面と、どのような対応があると働きやすいのかを一緒に整理するとよいでしょう。
Q.アセスメント結果は変わることがありますか?
あります。体調、経験、作業への慣れ、生活環境などによって状況は変化します。
最初は職員と一緒でなければできなかった作業が、経験を重ねることで一人でできるようになる場合もあります。反対に、体調や生活環境の変化によって、以前できていたことが難しくなる場合もあります。
そのため、アセスメントは一度作成して終わりではなく、現在の状態に合わせて見直すことが大切です。
Q.A型やB型の見学時にも相談できますか?
だいこん畑では、利用するサービスがまだ決まっていない段階でも、見学や相談を受け付けています。
就労継続支援A型と就労継続支援B型のどちらが自分に合っているか分からない場合も、現在の体調や生活リズム、希望する利用日数、得意なこと、働き方の希望などを整理するところから相談できます。
まとめ
障害福祉のアセスメントは、本人のできないことを探すための評価ではありません。本人の希望や得意なこと、生活状況、作業中の様子、困っていること、必要な配慮などを整理し、その人に合った支援や働き方を考えるために行います。
- 本人の希望を支援の出発点にする
- 作業能力だけでなく生活状況や環境も確認する
- できないことだけでなく本人の強みを見る
- 一度の結果だけで判断せず継続して確認する
- アセスメントを個別支援計画や具体的な支援へつなげる
- SOAPなどを活用し、事実と評価を分けて記録する
- モニタリングと再アセスメントを繰り返す
本人自身の能力だけを見るのではなく、「どのような環境や支援があれば力を発揮しやすいのか」という視点を持つことで、より具体的な支援につながります。
大阪市で就労継続支援の利用を検討している方や、「自分にはどの働き方が合うのか分からない」という方は、利用を決める前に事業所へ相談・見学することもできます。利用開始までの手続きについては、利用・応募までの流れもご覧ください。
大阪市で就労継続支援事業所を
お探しの方へ
自分に合う働き方を
だいこん畑で
一緒に考えませんか?
だいこん畑では、
大阪市内で就労継続支援A型・B型の
事業所を運営しています。
体調や生活リズム、得意なこと、
希望する働き方を確認しながら、
無理のない利用方法をご案内します。
利用するか決まっていない段階でも、
見学や相談だけで問題ありません。
ご本人だけでなく、ご家族、相談支援専門員、
医療機関などからのご相談も
受け付けています。