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解決志向アプローチとは?障がい者就労支援で使える質問技法と面談例

「利用者の希望を聞いても、次の行動につながらない」「面談で課題を確認するうちに、できないことの話ばかりになる」。障がい者就労支援の現場では、こうした悩みが生じることがあります。本人の不安を受け止めながら、働き方の改善につながる面談を行うには、どのような質問が役立つのでしょうか。

その手がかりになるのが、解決志向アプローチ(ソリューション・フォーカスト・アプローチ、SFA)です。問題の原因だけに焦点を当てず、本人が望む状態、すでにできていること、次に試せる小さな一歩を対話から探していきます。

解決志向は、支援員が正解を提示するための技法ではありません。利用者自身の言葉から、取り組みやすい方法を一緒に見つける姿勢が基本です。体調や作業環境への配慮と組み合わせて用いる必要があります。

この記事では、解決志向アプローチの基本から、ミラクル・クエスチョン、例外探し、スケーリング・クエスチョンの使い方、就労継続支援A型・B型で想定される面談例、支援記録へのつなげ方、実践時の注意点を説明します。

この記事で分かること

  • 解決志向アプローチと問題志向の違い
  • 就労支援で使える3つの質問技法と具体的な聞き方
  • 作業不安・通所不安などに対応する面談例
  • 面談の内容を小さな目標や個別支援へつなげる方法
  • 質問を押しつけず、安全と本人の意思を守る注意点

1.解決志向アプローチとは?

解決志向アプローチとは、困りごとを抱える本人が望む未来と、そこへ近づくために使える資源や行動に注目する対話の考え方です。ソリューション・フォーカスト・ブリーフセラピー(SFBT)に由来し、面接や相談などの場面にも応用されています。

1-1.解決志向の基本と問題志向との違い

問題志向の面談では「なぜ遅刻したのか」「どの工程で間違えたのか」のように、原因や課題を分析することがあります。一方、解決志向では「時間どおりに来られた日は何が違ったか」「うまく進んだ工程はどこか」と尋ね、再現できる工夫を探します。

どちらか一方だけが正しいわけではありません。作業ミスの原因確認や安全対策には問題分析が必要です。そのうえで、利用者がすでに持っている力や、負担が少なかった状況を確認すると、改善策を本人と共有しやすくなります。

「問題がない状態」だけでなく「本人がどのように働きたいか」を具体的にする点が、解決志向の特徴です。例えば「ミスをしない」よりも「確認表を使い、安心して作業を終えられる」と表現した方が、次に何をするかを相談しやすくなります。

1-2.就労支援で活用する目的

障がい者就労支援では、本人がどのような仕事に取り組みたいか、どんな配慮があれば続けやすいかを丁寧に確認する必要があります。支援員の見立てだけで目標を決めず、本人の経験と言葉を出発点にすることが大切です。

例えば、毎日同じ量の作業ができなくても、午前中なら集中しやすい、静かな場所なら確認作業が進むなど、条件が整うと力を発揮できることがあります。面談でそうした条件を探すと、作業配置や休憩の調整を考える材料になります。

ポイント

解決志向は「問題を見ない方法」ではありません。困りごとを十分に受け止めたうえで、本人が望む状態と、すでに役立っている工夫を一緒に探す方法です。

2.面談に使える3つの質問技法

解決志向の面談で使われる代表的な質問には、ミラクル・クエスチョン、例外探し、スケーリング・クエスチョンがあります。質問の名称を覚えるよりも、何を確かめるために聞くのかを理解することが大切です。三つを毎回すべて使う必要はありません。

2-1.ミラクル・クエスチョン

ミラクル・クエスチョンは、困りごとが解決したとしたら、どのような変化が起きているかを具体的に思い描くための質問です。たとえば「もし今の仕事の困りごとが解消していたら、明日の作業はどんなふうに進んでいますか」と聞きます。

利用者が「落ち着いて作業できている」と答えたら、「何をしているときに落ち着いていますか」「周りの人から見て、どんな違いがありますか」と尋ねます。漠然とした希望を、作業や環境の変化として言葉にするためです。

「奇跡」という表現が分かりにくい場合は、「少し楽に働ける日があるとしたら、何が違いそうですか」などに言い換えます。未来を想像すること自体が負担になる方には、今週の過ごしやすかった場面を尋ねる方が適切なこともあります。

2-2.例外探しとスケーリング

例外探しは、困りごとが起きなかった日や、いつもより軽かった状況を探す質問です。「作業が少し楽だった日はありましたか」「その日は作業場所や手順に違いがありましたか」と聞き、本人や周囲が行っていた工夫を確認します。

例えば、普段は検品作業で焦りやすい方が、手順を紙で確認した日は落ち着いて進められたとします。その場合は「確認表を使うと負担が減るか」を本人に確認し、次回も試せるか相談します。うまくいった理由を支援員が一方的に決めないことが大切です。

スケーリング・クエスチョンは、今の状態や自信の程度などを数字で表し、変化を具体化する方法です。「安心して作業できる状態を10、まったく安心できない状態を0とすると、今はいくつくらいですか」と尋ねます。

本人が「4」と答えたら「どうして0ではなく4なのですか」と、すでにある支えを確認します。続いて「4から5に近づくには何があるとよさそうですか」と聞けば、手順の確認や声かけの調整など、無理のない一歩を考えられます。数字が苦手な方には表情カードや三段階の選択肢を使う工夫もできます。

3.解決志向の面談を進める手順

質問技法は、決められた順番で機械的に使うものではありません。まず困りごとを聞き、本人が話したい内容を確かめ、その後で望む状態や取り組み方を一緒に整理します。

3-1.困りごとの確認と希望の整理

面談の最初は「最近、仕事で気になっていることはありますか」と声をかけ、話を遮らずに聞きます。「毎朝つらい」と話す方に、すぐ「うまく来られた日は?」と質問すると、つらさを軽く扱われたと感じる場合があります。まず疲労や体調、生活上の事情を確認しましょう。

話を聞いたうえで「今日は、少しでも通いやすくするための方法を一緒に考えてもよいですか」と尋ねます。本人の同意を得てから、過去に負担が軽かった日や、今後どうなっていたいかを聞く流れが自然です。答えたくない質問を無理に続ける必要はありません。

3-2.小さな行動目標へのつなげ方

望む状態が見えてきたら、次回までに試す行動を一つに絞ります。「毎日休まず通う」という大きな目標ではなく、「前日に持ち物を準備してみる」「開始前に作業手順を一緒に確認する」など、本人が選べる小さな方法を考えます。

目標を決める際は、誰が、いつ、何をするのかを確認します。支援員が手順書を用意する、本人が疲れたら合図を出すといった役割分担も必要です。本人だけに努力を求める目標になっていないか、振り返りの段階でも確かめます。

次の面談では「できたか、できなかったか」だけで終わらず、「試してみてどうだったか」「少し楽だった場面はあったか」を聞きます。うまくいかなければ目標を小さくする、別の工夫を選ぶなど柔軟に調整します。

4.就労支援での具体的な面談例

ここからは、就労支援で想定される架空の会話例を紹介します。だいこん畑の実際の利用者事例や、解決志向の効果を検証した実績ではありません。面談時の言葉の選び方を考えるための参考例です。

4-1.作業の遅れに不安がある場合

利用者:「周りより作業が遅いので、迷惑をかけている気がします」
支援員:「遅れが気になっているのですね。どの場面が特に大変ですか」
利用者:「次の工程に進むときに、手順を忘れてしまいます」
支援員:「少し進めやすかった日はありましたか」
利用者:「工程ごとの紙があった日は、落ち着いてできました」
支援員:「その紙を使う方法を、次の作業でも試してみますか」

この場面では、作業が遅い理由を本人の能力だけに結びつけず、作業手順の見える化という環境側の工夫に着目しています。実際には、作業量の設定が適切か、疲労や視認性の問題がないかなども確認します。

支援記録には「手順表があると進めやすいという本人の発言」「次回の作業で手順表を試す」「振り返り時に負担感を確認する」と残せます。成功を決めつけず、次回の結果から支援を見直すことがポイントです。

4-2.通所や職場実習に不安がある場合

利用者:「朝、事業所に行けるか不安になります」
支援員:「朝の不安が大きいのですね。最近、少し来やすかった日はありましたか」
利用者:「前の晩に準備できた日は、少し気が楽でした」
支援員:「準備が助けになったのですね。他にも安心できることはありますか」
利用者:「朝に連絡していいと分かっていたら安心です」
支援員:「連絡方法を決めておきましょうか。負担の少ない方法を一緒に考えましょう」

この場合、通所できた回数だけで成果を判断しません。朝の不安が強い背景に、睡眠、服薬、通院、移動の負担などがないかも確認します。本人が希望する範囲で家族、相談支援専門員、医療機関などとの連携を考える場合もあります。

職場実習を控えた方なら「実習が少し安心して終わったとしたら、何ができていそうですか」と聞けます。「困ったときに担当者へ質問できる」と答えた場合は、質問の練習や相談先の確認を具体的な準備にできます。

5.面談内容を個別支援に活かす方法

面談で本人の希望が整理できても、実際の支援計画や作業環境に反映されなければ意味が薄れてしまいます。面談後は、本人の言葉、試す方法、事業所側が整える条件、確認する日を整理すると継続的な支援につながります。

  • 本人の希望:「慌てず検品を終えたい」
  • すでにできていること:「手順が見えると落ち着いて進められる」
  • 試すこと:「写真付き手順表を用意し、次回の検品で使う」
  • 確認すること:「作業の負担、ミスの有無、本人の感想を次回面談で確認」

個別支援計画に関連づける場合は、本人の意向や支援上の必要性を踏まえて担当者間で共有します。面談の回答をそのまま評価点にしたり、本人の同意なく私的な内容を広く共有したりしない配慮が必要です。

また、本人が選んだ方法でも実際に続けにくい場合があります。そのときは「約束を守れなかった」と責めるのではなく、環境や支援の側に変えられる点がないか検討します。繰り返し確認できる小さな行動目標が、日々の作業支援を考える材料になります。

支援員同士で面談内容を引き継ぐときも、数値だけではなく「本人が何を希望しているか」「どの工夫なら取り組みやすかったか」を短く書き添えます。支援方針を共有しやすくなる一方、聞き取り内容には個人情報が含まれるため管理に注意します。

6.解決志向を使う際の注意点

解決志向は、質問を多くすれば効果が高まるという技法ではありません。「前向きな答えを出さなければ」と本人が感じてしまうと、本来の困りごとが話しにくくなることがあります。

まず、身体の不調、精神的な不安、職場での嫌がらせ、事故につながる危険などがある場合は、状況を正確に把握して安全確保や適切な対応を優先します。必要な原因分析、合理的配慮、関係機関への相談を省いてはいけません。

また、ミラクル・クエスチョンのような抽象的な問いが理解しにくい方もいます。質問を短くする、具体的な選択肢を示す、文字や写真を使うなど、本人に合わせた伝え方に変更します。沈黙があっても急いで答えを促さず、別の日に話す選択も尊重します。

「できたこと」を尋ねても思い浮かばない場合は、否定せず「今日はつらかったのですね」と受け止めます。そこから「今、少しでも助けになることはありますか」と尋ねる方法もあります。相談面接では、話を聞いてもらえたという安心感が先に必要な場面もあります。

解決志向は医療的な診断や治療に代わるものではなく、技法を用いただけで就労定着率や満足度が向上すると断定できません。本人の状態や支援環境によって結果は異なります。支援の効果を確認する際には、本人の声や生活状況も含めて慎重に振り返ります。

確認しておきたいこと

解決志向の質問を使う前に、本人が今何について話したいかを確認しましょう。体調、安全、権利に関わる問題は、前向きな質問だけで処理せず、必要な支援と調整を優先してください。

7.大阪市での就労支援と相談先

大阪市で就労支援を利用したいと考える場合は、本人が希望する働き方と現在の状況に応じてサービスを選びます。就労継続支援A型は雇用契約に基づいて働く機会と支援を提供し、B型は原則として雇用契約を結ばずに生産活動などを行うサービスです。対象要件や利用方法は個別に確認が必要です。

解決志向の面談は、A型・B型のどちらかを一方的に勧めるためではなく、本人が何を大切にしたいかを整理する場面で参考になります。「働く時間を少しずつ増やしたい」「自分に合う作業を探したい」といった希望から、見学や相談時に確認したいことを考えられます。

だいこん畑では大阪市内で就労継続支援A型・就労継続支援B型の事業所を運営しています。事業所の場所や提供サービスは事業所一覧でご確認ください。

利用前にサービスを比較したい場合は福祉サービス比較、申し込みの手順を知りたい場合は利用・応募までの流れも参考になります。就職後の支援については、対象となる方が利用する就労定着支援の内容も確認できます。

大阪市の東住吉区・住吉区・住之江区などで事業所を探している方も、通いやすさや作業内容、必要な配慮を見学時に確認すると、本人に合う環境を考えやすくなります。

8.解決志向アプローチのよくある質問

Q.解決志向アプローチは、問題の原因を調べない方法ですか?
A.原因を調べてはいけないという意味ではありません。安全対策や環境調整に必要な確認は行いながら、望む状態やすでに役立っている行動も探す方法です。

Q.ミラクル・クエスチョンに答えられない利用者にはどうしますか?
A.無理に回答を求めません。「少し働きやすかった日」など身近な場面を尋ねたり、選択肢を示したり、質問自体を変えたりします。

Q.スケーリングで低い点数が出たらどう考えますか?
A.本人を評価する点数ではありません。何が負担なのか、今ある支えは何か、少し楽になるにはどんな配慮が必要かを相談する手がかりにします。

Q.動機づけ面接や傾聴とはどう違いますか?
A.傾聴は話を丁寧に受け止める基本的な関わり方です。動機づけ面接は変化への迷いを扱う面接法で、解決志向は望む未来や例外、小さな一歩を探す質問を特徴とします。実際の面談では相互に補い合う場面があります。

まとめ

解決志向アプローチは、障がい者就労支援の面談で、本人が望む働き方と次に試せる工夫を一緒に考えるための方法です。ミラクル・クエスチョンで望む状態を描き、例外探しで役立った条件を見つけ、スケーリングで小さな変化を確かめることができます。

最も大切なのは、質問の技術よりも本人の言葉を尊重する姿勢です。できている部分だけを見るのではなく、不安や体調の変化にも耳を傾け、必要な環境調整につなげましょう。

  • 本人の困りごとを聞いてから、望む状態を一緒に考える
  • 質問技法は目的に応じて選び、答えを押しつけない
  • 小さな行動目標と事業所側の配慮をセットで決める
  • 実施後は本人の感想を聞き、支援方法を見直す

大阪市で就労継続支援事業所の利用を検討している方は、まず見学や相談で、希望する作業や働き方、必要な配慮を伝えてみてください。

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参考資料:解決志向ブリーフセラピーにおける質問技法の留意点(教育心理学研究)、Solution Focused Therapy Treatment Manual(SFBTA)。本文中の会話例は説明用に作成した架空の例です。

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