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障がい者就労支援と企業連携とは?採用・職場実習・定着支援の進め方を解説

「障がい者雇用を始めたいが、どのように就労支援機関と連携すればよい?」「採用後も安定して働いてもらうためには、どのような支援が必要?」と考えている企業担当者もいるのではないでしょうか。

障がい者雇用では、企業が求人を出して採用するだけでなく、本人に合う仕事の整理、職場実習、合理的配慮、採用後の定着支援など、さまざまな場面で外部の支援機関と連携できます。

特に初めて障がい者を雇用する企業では、「どの仕事を任せればよいか」「どこまで配慮すればよいか」「現場の社員へどう説明すればよいか」と迷うことがあります。

こうした課題をすべて企業だけで解決する必要はありません。ハローワーク、地域障害者職業センター、ジョブコーチ、就労支援機関などと役割を分けながら進める方法があります。

この記事では、障がい者就労支援と企業が連携する方法について、採用前の職務整理から職場実習、採用、合理的配慮、定着支援まで順番に解説します。

この記事で分かること

  • 障がい者就労支援と企業が連携する方法
  • 企業が採用前に整理しておきたい仕事
  • 職場見学・職場実習を活用する考え方
  • 合理的配慮を考えるポイント
  • ジョブコーチなど外部支援の活用方法
  • 採用後の職場定着を支える方法
  • 企業連携を継続するためのポイント

1.障がい者就労支援と企業連携とは?

障がい者就労支援と企業の連携には、さまざまな形があります。

企業が障がい者を直接雇用する場合だけでなく、採用前の相談、職務整理、職場見学、職場実習、採用後の定着支援などで、就労支援機関と関わることができます。

1-1.企業だけで雇用を抱え込まない

障がい者雇用を初めて行う企業では、障害についての専門知識を持つ社員がいない場合もあります。

そのため、「企業内に専門家がいないから雇用できない」と考えてしまうことがあります。

しかし、企業が利用できる外部支援は複数あります。

企業側は雇用管理や仕事の提供を担当し、必要に応じて支援機関から専門的な助言を受けるというように、役割を分けることができます。

1-2.企業と支援機関の役割を分ける

支援機関と連携するからといって、企業の日常的な雇用管理をすべて外部へ任せるわけではありません。

企業は、仕事内容、勤務条件、評価、指導など、雇用主として必要な対応を行います。

一方、支援機関は、本人や企業から相談を受け、仕事の進め方や必要な配慮、職場適応などについて支援することがあります。

企業と支援機関がそれぞれの役割を理解することで、どちらか一方に負担が集中しにくくなります。

1-3.A型・B型との連携もある

企業と就労継続支援A型・B型事業所が関わる方法もあります。

A型では利用者と事業所が雇用契約を結び、B型では事業所との雇用契約を結ばず、生産活動などに取り組みます。

企業からA型・B型事業所へ仕事を発注したり、条件を満たした施設外就労として企業内で請負作業を行ったりすることもあります。

一方、一般企業への就職を希望する方については、職場見学や実習、求人応募などを通じて企業と支援機関が連携する場合があります。

A型とB型の違いについては、就労継続支援A型・B型などのサービス比較もご覧ください。

2.障がい者雇用を取り巻く環境

民間企業には、障害者雇用促進法に基づく障害者雇用率制度があります。

2026年7月から、民間企業の法定雇用率は2.7%となり、対象となる事業主の範囲は常用雇用労働者37.5人以上となっています。

対象企業にとって必要な人数を確認することは重要ですが、障がい者雇用は「人数を採用したら完了」というものではありません。

採用後に仕事内容が曖昧だったり、指導する社員が決まっていなかったりすると、本人も企業側も困ることがあります。

そのため、採用人数を確認することと並行して、仕事と受入体制を準備していく必要があります。

3.まず社内の仕事を整理する

障がい者雇用を始めるときに重要なのが、職務の整理です。

「障がい者には何をしてもらえばよいか」と考える前に、現在社内にどのような仕事があるかを確認します。

  • データ入力
  • 書類のPDF化・整理
  • 郵便物の準備
  • 商品の検品・梱包
  • 備品管理・補充
  • 清掃
  • 商品の登録・情報更新

一つひとつは短時間の仕事でも、複数部署から集めることで一つの職務として整理できる場合があります。

その際は、仕事内容だけでなく、作業量、頻度、納期、必要な判断、作業場所なども確認しましょう。

障害名から仕事を決めない

「障がい者だから軽作業」という考え方ではなく、仕事を整理したうえで本人の経験、得意不得意、希望などと組み合わせて考えることが重要です。

4.本人と仕事の相性を確認する

同じ障害名であっても、得意なことや苦手なこと、必要な配慮は一人ひとり異なります。

そのため、障害名だけで仕事内容を決めるのではなく、本人と仕事の組み合わせを確認します。

たとえば、パソコン操作が得意でも電話対応には負担を感じる方もいれば、人とのやり取りを得意とする方もいます。

細かい確認作業を得意とする方もいれば、長時間同じ作業を続けることに負担を感じる方もいます。

採用時には「できる・できない」だけではなく、どのような条件なら力を発揮しやすいかまで確認することが重要です。

5.職場見学・実習を活用する

採用前に職場見学や職場実習を実施できる場合は、本人と企業の双方が実際の仕事を確認する機会になります。

面接だけでは、実際の作業環境や仕事との相性まで判断することは難しい場合があります。

職場を実際に見ることで、本人は通勤方法、職場の雰囲気、仕事内容、休憩場所などを確認できます。

企業側も、どのような説明方法なら理解しやすいか、作業量やスピードは適切か、どのような配慮が必要になりそうかを検討する材料にできます。

ただし、職場実習を行ったから採用が決まるわけではありません。実習の目的、期間、業務内容、支援方法などを関係機関と確認したうえで進めます。

6.合理的配慮を一緒に考える

障がい者雇用では、募集・採用時や採用後に、本人との話し合いを通じて必要な合理的配慮を検討します。

合理的配慮は、障害名だけを見て企業が一方的に決めるものではありません。

  • 指示を口頭だけでなく文字でも伝える
  • 作業手順を一覧にする
  • 相談する担当者を明確にする
  • 休憩方法を相談する
  • 座席や作業環境を調整する
  • 通院などについて勤務方法を相談する

実際に必要となる配慮は、仕事内容や職場環境、本人の状況によって異なります。

一度決めた内容を固定するのではなく、働き始めてから必要に応じて見直すことも大切です。

7.採用前に社内体制を整える

本人と仕事が合っていても、社内の受入体制が不明確では働きにくくなる場合があります。

採用前に、少なくとも「誰が何を担当するか」を整理しておきましょう。

  • 仕事内容を教える担当者
  • 日常的な相談を受ける担当者
  • 勤怠や労務を管理する担当者
  • 支援機関との連絡担当者

中小企業では一人が複数の役割を担当することもあります。

その場合でも、「誰に聞けばよいか」が本人にも社員にも分かる状態を作ることが重要です。

障がい者雇用を特定の担当者だけの仕事にせず、必要な情報を適切な範囲で共有することも職場定着につながります。

8.支援機関と連携する

障がい者雇用について社内だけで整理することが難しい場合は、外部機関へ相談できます。

ハローワークや地域障害者職業センターなどでは、障がい者を雇用しようとする企業への支援も行われています。

大阪障害者職業センターでは、企業向けの雇用支援やジョブコーチによる支援などを行っています。

「まだ採用していないから相談できない」と考えず、どの仕事を任せるか検討している段階から、利用できる支援がないか確認するとよいでしょう。

また、本人が利用している就労支援機関がある場合には、本人の同意や必要な情報の取扱いに配慮しながら連携することも考えられます。

9.ジョブコーチを活用する

本人と企業だけでは職場での課題を整理しにくい場合、ジョブコーチによる支援を検討できることがあります。

ジョブコーチは職場へ出向き、障がいのある本人だけでなく、事業主や職場の従業員に対しても支援を行います。

  • 仕事の教え方
  • 職務内容の調整
  • 作業手順の整理
  • 職場環境の改善
  • コミュニケーション方法

大阪障害者職業センターでは、ジョブコーチ支援を雇用前の職場実習、採用と同時、雇用後の各段階で利用できる場合があります。

ただし、ジョブコーチが企業に代わって日常的な職場管理を続けるわけではありません。

支援を通じて、最終的には職場の上司や同僚が本人に合った支援方法を理解し、職場内で支援できる状態を目指します。

企業側も支援を受けられる

就労支援は本人だけのものではありません。企業側も、仕事の教え方、職務の調整、職場環境などについて専門的な支援を受けられる場合があります。

10.採用後の定着を支える

障がい者雇用では、採用した時点がゴールではありません。

実際に働き始めると、採用前には分からなかった困りごとが出てくる場合があります。

たとえば、仕事内容は理解できていても、「質問するタイミングが分からない」「複数の人から異なる指示を受けて混乱する」「午後になると疲れが強くなる」といったことがあります。

このような場合、本人の努力不足と考えるのではなく、仕事内容、指示方法、勤務時間、職場環境などを一つずつ確認します。

必要に応じて本人と面談したり、支援機関へ相談したりしながら対応を考えます。

一般就労後に要件を満たす場合には、就労定着支援を利用できることもあります。

11.入社後1~3か月を確認する

入社直後は本人だけでなく、仕事を教える社員にとっても新しい働き方に慣れる期間です。

最初の1~3か月程度は、仕事の成果だけを見るのではなく、働き方全体を確認しましょう。

  • 勤務時間や日数に無理がないか
  • 仕事内容を理解できているか
  • 仕事量が適切か
  • 分からないときに質問できているか
  • 必要な配慮が機能しているか
  • 指導担当者に負担が集中していないか

本人が「大丈夫です」と話していても、仕事の疲れが生活へ影響している場合もあります。

反対に、企業側が必要以上に配慮し、本人ができる仕事まで制限してしまう場合もあります。

双方の状況を確認しながら、必要な部分を調整していくことが重要です。

12.仕事の幅を見直していく

職場へ定着することと、ずっと同じ仕事だけを続けることは同じではありません。

本人が仕事に慣れ、新しい業務に挑戦したいと希望する場合には、担当する仕事の幅を広げることも検討できます。

たとえば、最初はデータ入力だけを担当し、慣れてきた段階で入力内容の確認や書類整理などへ仕事を広げる方法があります。

一方、仕事を増やしたことで負担が大きくなった場合には、業務量を戻したり作業方法を変更したりすることも必要です。

本人の希望と現在の状況を確認しながら、職務を継続的に見直していきましょう。

13.モデルケース1|事務業務を切り出す

ここからは、企業連携の進め方を分かりやすくするためのモデルケースを紹介します。

ある企業で、営業社員が顧客対応のほか、データ入力、書類のPDF化、郵便物の発送準備などを行っていたとします。

障がい者雇用を検討する際に各部署の業務を洗い出し、これらの定期的な事務作業を一つの職務として整理します。

採用した方には、最初からすべてを担当してもらうのではなく、手順を整理しやすいデータ入力から始めます。

仕事を進める中で、口頭説明より作業手順を文字で確認できる方が進めやすいことが分かれば、チェックリストなどを準備します。

その後、本人の希望や仕事の習得状況を確認しながら、書類整理や発送業務へ担当範囲を広げていく方法があります。

14.モデルケース2|現場作業を調整する

製造や物流などの現場では、検品、仕分け、梱包などの仕事を担当するケースを考えることができます。

ただし、「軽作業だから障がい者に向いている」と判断するのではありません。

たとえば検品では、細かい違いを見分ける必要があるのか、一定の作業速度が必要なのか、立ち仕事が続くのかなど、実際の作業条件を確認します。

本人が正確な確認作業を得意としていても、長時間の立ち作業に負担があるのであれば、作業台や担当工程などを調整できないか検討します。

このように、「障害」と「仕事」を大まかに組み合わせるのではなく、実際の作業条件と本人の状況を細かく確認することが重要です。

事例はモデルケースです

上記は特定企業の成功事例や実績を示すものではありません。企業と就労支援機関が連携する方法を分かりやすく説明するためのモデルケースです。

15.連携がうまくいかないときは?

企業と支援機関が関わっていても、すべてが最初からうまくいくとは限りません。

問題が生じた場合は、「本人」「企業」「支援機関」のどこか一つに原因を求めるのではなく、具体的な状況を整理します。

  • 仕事内容は本人に合っているか
  • 企業と支援機関の役割は明確か
  • 本人への指示が統一されているか
  • 必要な情報が共有されているか
  • 本人が相談できる相手はいるか
  • 企業担当者の負担が大きくなっていないか

特に、支援機関が関わっていることで、企業側が「困りごとはすべて支援者へ任せればよい」と考えてしまうと、職場内での関係づくりが進みにくくなることがあります。

反対に、企業だけで問題を抱え込み、支援機関へ相談するタイミングが遅くなることも避けたいところです。

16.企業連携で大切なこと

障がい者就労支援と企業連携の目的は、「支援機関が企業へ人材を紹介すること」だけではありません。

本人が自分の力を発揮しやすい仕事を見つけ、企業が無理なく雇用を続けられる環境を一緒に考えることが重要です。

そのためには、採用前だけでなく、採用後も必要に応じて話し合う関係を作ります。

本人の状況が変わることもあれば、企業側の仕事内容や担当者が変わることもあります。

「一度決めた支援方法を守り続ける」のではなく、変化に応じて仕事や配慮を見直せる関係を作ることが、長期的な連携につながります。

17.障がい者就労支援と企業連携のFAQ

Q.企業は採用前でも支援機関へ相談できますか?

はい。地域障害者職業センターなどでは、障がい者の雇用を検討している事業主への相談や支援も行っています。

Q.どの仕事を任せるか決まっていなくても相談できますか?

職務の整理や仕事内容の検討について相談できる支援機関があります。

まず社内にどのような業務があるかを洗い出したうえで相談すると、具体的な検討を進めやすくなります。

Q.就労支援事業所から直接採用できますか?

就労支援事業所の利用者が一般企業への就職を希望し、企業の求人条件などと合えば、求人応募や採用へ進む場合があります。

ただし、事業所を利用していることだけで採用が決まるわけではありません。本人の希望、企業の採用条件、必要な手続きなどを確認して進めます。

Q.職場実習をすれば採用しなければなりませんか?

職場実習を行ったことだけで採用が義務づけられるものではありません。

実習は、本人と企業の双方が仕事内容や職場環境を確認する機会として活用される場合があります。

Q.ジョブコーチは企業も支援してくれますか?

はい。ジョブコーチは本人だけでなく、事業主や職場の従業員にも、職務内容、仕事の教え方、職場環境などについて支援を行います。

Q.採用後も支援機関と連携できますか?

利用できる支援は本人の状況や制度によって異なりますが、ジョブコーチによる職場適応支援や、要件を満たす場合の就労定着支援などがあります。

まとめ|企業と支援機関で働き続けられる環境をつくる

障がい者就労支援と企業の連携は、採用時だけに行うものではありません。

  • 採用前に社内の仕事を整理する
  • 障害名ではなく本人と仕事の相性を確認する
  • 職場見学や実習を活用する方法もある
  • 本人と相談しながら合理的配慮を考える
  • 企業内の担当者と役割を決める
  • 必要に応じて外部支援を利用する
  • ジョブコーチは企業側も支援する
  • 採用後も仕事内容や配慮を見直す
  • 本人と企業の双方の状況を確認する

障がい者雇用を成功させるために重要なのは、障がいのある方だけに職場へ合わせてもらうことでも、企業がすべてを特別対応することでもありません。

本人の経験や得意不得意、企業の仕事内容、職場環境を確認し、必要な部分を調整することが基本です。

そして、企業だけでは判断しにくいことがあれば、ハローワーク、地域障害者職業センター、ジョブコーチ、就労支援機関など外部の専門的な支援を活用できます。

採用前から採用後まで、本人・企業・支援機関がそれぞれの役割を確認しながら連携することが、働き続けやすい職場づくりにつながります。

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