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中小企業の障害者雇用を経営に活かすには?業務切り出し・定着支援・就労支援事業所との連携を解説

中小企業で障害者雇用を考えるとき、「どの仕事を任せればよいか分からない」「現場が対応できるか不安」「採用しても定着するだろうか」と悩むことがあります。

障害者雇用は、単に採用人数を増やせばよいものではありません。社内の仕事を整理し、本人が力を発揮しやすい業務を考え、必要な配慮や相談体制を整えることが欠かせません。

一方で、業務を細かく見直す過程は、これまで特定の社員に集中していた仕事や、手順が曖昧だった仕事を整理する機会にもなります。障害者雇用への対応をきっかけに、業務の標準化や役割分担を見直せる場合があります。

この記事では、中小企業の障害者雇用について、制度の基本、仕事の切り出し方、合理的配慮、社内体制、採用後の定着支援、就労支援事業所との連携まで、中小企業診断士の視点を交えて具体的に解説します。

この記事で分かること

  • 中小企業が障害者雇用に取り組むときの基本
  • 法定雇用率と合理的配慮の考え方
  • 障害者雇用に向く仕事の切り出し方
  • 採用前に社内で準備しておきたいこと
  • 採用後の定着支援のポイント
  • 就労支援事業所と企業が連携する方法

1.中小企業の障害者雇用とは

障害者雇用とは、障がいのある方を企業が労働者として雇用することです。

企業にとって重要なのは、「障がいのある人のために特別な仕事を用意する」と考えることだけではありません。現在社内にある仕事を見直し、どの業務なら担当できるか、どのような方法なら継続できるかを考えることが基本になります。

例えば、これまで社員が本来の業務と並行して行っていた書類整理、データ入力、商品の検品、清掃、備品管理などを整理すると、一つの仕事として切り出せる場合があります。

こうした業務整理は障害者雇用だけのためではありません。「誰が何を担当しているか分からない」「一部の社員に雑務が集中している」といった中小企業の業務課題を見直すきっかけにもなります。

そのため、障害者雇用を人事部門だけの課題とせず、業務設計や組織運営の一部として考えることがポイントです。

2.障害者雇用を始める前に確認すること

障害者雇用を始める前に、まず制度と社内の現状を整理します。

2-1.法定雇用率を確認する

障害者雇用促進法では、一定規模以上の事業主に対して障害者の雇用が義務付けられています。

2026年7月から、民間企業の法定雇用率は2.7%となっています。対象となる企業の範囲も変わるため、自社が対象に該当するかは最新情報を確認する必要があります。

ただし、障害者雇用を「法定雇用率を達成するためだけの取り組み」と考えると、採用後の仕事内容や支援体制の検討が不足することがあります。

2-2.雇用人数だけを目的にしない

採用人数を決める前に、「どの仕事を担当してもらうのか」を確認します。

仕事が明確でないまま採用すると、本人も「何をすればよいか分からない」、現場側も「何を任せればよいか分からない」という状態になりやすくなります。

まず仕事を整理し、その業務に必要な力や作業環境を確認したうえで採用を考える方が、本人と企業の双方が働き方をイメージしやすくなります。

2-3.現場の不安を確認する

経営者や人事担当者が障害者雇用を進めたいと考えていても、実際に一緒に働く現場では不安を感じている場合があります。

  • どのように仕事を教えればよいか分からない
  • どこまで配慮すればよいか分からない
  • 困ったとき誰に相談すればよいか分からない
  • 他の社員との業務分担が心配
  • 体調不良があった場合の対応が分からない

こうした不安を「理解不足」と片付けず、具体的な疑問として整理しておくことが大切です。

採用前から支援機関などと相談し、現場が対応方法を知っておくことで、必要以上の不安を減らせる場合があります。

3.障害者雇用の仕事を切り出す方法

障害者雇用で企業が悩みやすいのが、「任せる仕事がない」という問題です。

この場合、最初から新しい職種を作るのではなく、現在ある仕事を細かく分解してみます。

3-1.社内の業務を洗い出す

まず部署ごとに、日常的に行っている業務を書き出します。

  • 書類の整理
  • データ入力
  • 郵便物の仕分け
  • 備品補充
  • 商品の検品
  • 梱包
  • 清掃
  • 資料のPDF化
  • ファイル名の変更
  • 商品画像の整理

ポイントは、正社員や専門職が行っている仕事の中に、別の担当者へ分けられる作業がないかを見ることです。

「営業職」「経理職」のように職種単位で考えると難しくても、その中にある個別作業まで分けると、任せられる仕事が見つかることがあります。

3-2.作業単位まで細かくする

例えば「商品の出荷業務」という一つの仕事でも、実際には複数の工程があります。

  1. 注文内容を確認する
  2. 商品を棚から取る
  3. 商品番号を確認する
  4. 数量を確認する
  5. 箱へ入れる
  6. 緩衝材を入れる
  7. ラベルを貼る
  8. 指定場所へ移動する

すべての工程を一人で担当するのが難しくても、「数量確認と梱包」など一部の工程を担当できる場合があります。

仕事を細分化することで、必要な能力や注意点も分かりやすくなります。

3-3.仕事を固定しすぎない

採用時に決めた仕事内容を、ずっと変えない必要はありません。

最初は一つの作業から始め、慣れてきたら別の工程を追加する方法もあります。反対に、実際に働いてみて負担が大きいと分かった作業は、担当方法を見直すことも考えられます。

「本人に合わせてすべて仕事を変える」のではなく、仕事の目的を保ちながら、どの工程をどのように担当するかを調整するという考え方が現実的です。

仕事がないときは業務を分解する

「障害者に任せる仕事がない」と感じたら、職種ではなく作業単位まで業務を分けてみましょう。社員が本来業務の合間に行っている作業が、独立した仕事になる場合があります。

4.障害者雇用と合理的配慮

障害者雇用を進める際には、合理的配慮について理解しておく必要があります。

雇用分野では、障害者であることを理由とする差別が禁止され、事業主には合理的配慮の提供が求められています。

合理的配慮とは、「障害がある人だけを特別扱いすること」ではありません。本人が能力を発揮して働くうえで支障となっていることについて、本人と企業が話し合い、必要な対応を検討するものです。

例えば、次のような対応が考えられる場合があります。

  • 口頭だけでなく文章でも指示を伝える
  • 一度に複数の指示を出さず順番に伝える
  • 作業手順書を用意する
  • 通院について勤務日を相談する
  • 休憩の取り方を相談する
  • 作業場所について相談する

必要な配慮は人によって異なるため、「この障害ならこの配慮」と一律に決めることは適切ではありません。

また、本人から希望された内容がすべてそのまま実施されるという意味でもありません。業務上の必要性や企業側の状況も確認しながら、具体的な方法を話し合います。

5.働きやすい業務設計のポイント

障害者雇用での業務設計は、本人に仕事を合わせるだけではなく、「仕事のやり方を分かりやすくする」という視点で考えると進めやすくなります。

例えば、担当者の頭の中だけにあった作業方法を手順書にすると、障がいのある社員だけでなく、新入社員やパート社員にも仕事を教えやすくなります。

  • 作業開始の条件を明確にする
  • 完成状態を明確にする
  • 手順を順番にする
  • 判断が必要な箇所を決める
  • 分からない場合の相談先を決める
  • 完了後の報告方法を決める

例えば「商品をきれいに並べてください」という指示は、人によって受け取り方が変わります。

「ラベルを正面に向け、棚の前端に合わせ、同じ商品を横に並べる」と具体化すれば、完成状態を共有しやすくなります。

こうした指示の具体化は、障害者雇用に限らず、業務品質を一定にするうえでも役立ちます。

6.採用前に社内で準備すること

採用前には、仕事内容だけでなく、本人を受け入れる社内体制も確認します。

6-1.担当者を決める

まず、日常的な仕事の指示や相談を誰が担当するかを決めます。

担当者が毎日変わると、指示の内容や優先順位が変わり、本人が混乱することがあります。

すべてを一人で対応する必要はありませんが、「仕事の指示はAさん」「勤務や体調についてはBさん」など、相談先を明確にしておくと働きやすくなります。

6-2.指示方法をそろえる

同じ作業でも、担当者によって説明方法が違うと、仕事を覚えにくくなることがあります。

手順書やチェック表を用意し、最低限の作業ルールを共有しておくことで、教える側の負担も軽減しやすくなります。

特に、「どの状態になれば仕事が完了なのか」を明確にしておくことが重要です。

6-3.相談方法を決める

仕事中に困ったときの相談方法も、あらかじめ決めておきます。

  • 分からないとき誰に聞くか
  • 体調が悪いとき誰に伝えるか
  • 仕事量について相談したいときどうするか
  • 人間関係で困ったとき誰に相談するか

「困ったら相談してください」だけでは、本人が誰にどのタイミングで伝えればよいか分からない場合があります。

相談先や方法を具体的にしておく方が、問題が大きくなる前に状況を共有しやすくなります。

7.採用後の定着を支える方法

障害者雇用では、採用後の定着も重要です。

採用時には問題がなくても、実際に働き始めると、想定していなかった困りごとが出る場合があります。

  • 仕事量が増えるとミスが増える
  • 質問するタイミングが分からない
  • 休憩を取らず疲れてしまう
  • 周囲の社員との認識が合わない
  • 通勤や生活面の負担が大きくなる

そのため、問題が起きてから面談するだけでなく、定期的に働き方を確認することが役立ちます。

例えば、「仕事はできていますか?」だけではなく、「困っている作業はあるか」「疲れやすい時間帯はあるか」「質問しにくい場面はないか」など、具体的に確認します。

就職後に支援機関との連携が続いている場合は、本人・企業・支援者で状況を共有する方法もあります。

就職後の支援については、条件に応じて就労定着支援を利用できる場合もあります。

8.業務改善につなげる考え方

障害者雇用のために業務を整理すると、結果として社内全体の業務改善につながる場合があります。

例えば、ある社員しか分からなかった仕事を手順書にすると、担当者が休んだ場合でも別の社員が対応しやすくなります。

また、「誰でもできるが誰も担当していない仕事」を整理すると、専門職が本来の仕事へ集中できるようになる場合があります。

経営の視点では、次のような項目を確認します。

  • 高い専門性が必要な仕事は何か
  • 定型化できる仕事は何か
  • 属人化している仕事は何か
  • 担当者が不足している作業は何か
  • 外部へ委託できる仕事は何か
  • 社内に残すべき仕事は何か

障害者雇用のための仕事探しを、単なる「作業探し」で終わらせず、業務全体を見直す機会として活用することがポイントです。

9.就労支援事業所との企業連携

障害者雇用を考えている企業は、就労支援機関と連携する方法もあります。

就労支援事業所では、利用者が事業所内で軽作業、清掃、データ入力などさまざまな作業に取り組んでいます。

企業と就労支援事業所が連携する方法は、直接雇用だけではありません。

  • 企業の作業を事業所へ依頼する
  • 企業内で行う作業について連携する
  • 職場見学や実習について相談する
  • 採用を検討する際に支援機関と情報共有する

例えば、梱包、封入、検品などの定型作業を事業所へ依頼することで、企業側がどのような作業なら外部と連携しやすいかを確認することもできます。

企業連携については、作業の品質、納期、数量、作業方法、情報管理などを事前に確認する必要があります。

就労継続支援B型と企業の連携については、就労継続支援B型のサービス内容もご確認ください。

10.雇用以外から連携を始める方法

障害者雇用に関心があっても、「すぐに採用するのは難しい」と感じる中小企業もあります。

その場合、最初から採用だけを考える必要はありません。

まず自社の仕事を整理し、外部へ依頼できる作業がないか確認する方法があります。

例えば、次のような業務です。

  • 商品の袋詰め
  • シール貼り
  • 封入
  • 検品
  • 簡単な組立
  • データ入力
  • 画像整理

こうした業務を就労支援事業所へ相談することで、企業側も障がいのある方がどのような仕事に取り組んでいるかを知る機会になります。

その後、企業見学や実習などにつながる場合もありますが、連携の内容は企業・事業所・本人の状況によって異なります。

雇用ありきで考えなくてもよい

障害者雇用について考え始めた段階では、まず社内業務を整理したり、支援機関へ相談したり、事業所との業務連携を検討したりする方法があります。自社に合う関わり方を段階的に考えることが大切です。

11.中小企業診断士の視点で考える

中小企業診断士の視点では、障害者雇用だけを独立した人事施策として見るのではなく、経営課題との関係を確認します。

例えば、「人手不足」という課題があっても、単純に採用人数を増やせば解決するとは限りません。

社員がどの仕事に時間を使っているかを確認すると、専門職が定型作業まで抱えている場合があります。

そこで業務を、例えば次のように整理します。

  • 専門性が高く社員が担当すべき仕事
  • 手順化すれば他の人でも担当できる仕事
  • 外部へ委託できる仕事
  • そもそもやめてもよい仕事

そのうえで、障がいのある方が担当できる仕事があるかを検討します。

つまり、「障がいのある人に何をさせるか」から考えるのではなく、「会社の仕事をどう整理するか」から考えることが、経営面でも重要です。

障害者雇用をきっかけに、業務の属人化、教育方法、役割分担、相談体制などを見直すことができれば、結果として他の社員にとっても働きやすい組織づくりにつながる可能性があります。

12.障害者雇用のよくある質問

中小企業でも障害者を雇用できますか?

できます。企業規模だけでなく、仕事内容、勤務時間、職場環境、支援体制などを確認し、自社で継続できる雇用方法を検討します。

障害者雇用の仕事が見つかりません

職種単位ではなく、現在社員が行っている仕事を作業単位まで細かく分けてみましょう。定型作業や補助業務を整理すると、仕事を切り出せる場合があります。

障害について詳しくないと採用できませんか?

すべての障害について詳しくなる必要はありません。本人が仕事をするうえで何に困り、どのような方法なら働きやすいかを確認することが大切です。必要に応じて支援機関へ相談する方法もあります。

合理的配慮はどこまで必要ですか?

必要な内容は本人と業務によって異なります。本人から困りごとや希望を確認し、企業側の業務や負担も踏まえて具体的な対応方法を話し合います。

採用後に困った場合は相談できますか?

ハローワーク、地域障害者職業センター、就労支援機関など、障害者雇用について相談できる機関があります。採用前から相談先を確認しておくと、問題が起きた際にも連携しやすくなります。

就労支援事業所と企業は連携できますか?

連携できる場合があります。業務の受託、企業での作業、職場見学や実習など、連携方法はさまざまです。具体的な内容は事業所へ確認してください。

障害者雇用は業務改善にもつながりますか?

必ず業務改善につながるとは限りませんが、仕事を細分化したり手順書を作成したりする過程で、業務の属人化や役割分担を見直す機会になることがあります。

まとめ

中小企業の障害者雇用では、採用人数だけでなく、仕事の切り出し、合理的配慮、社内体制、採用後の定着まで一体で考えることが大切です。

  • 障害者雇用は業務設計から考える
  • 法定雇用率など最新制度を確認する
  • 職種ではなく作業単位まで仕事を分ける
  • 合理的配慮は本人と企業で具体的に話し合う
  • 指示方法や相談先を採用前に整理する
  • 採用後は定期的に働き方を確認する
  • 就労支援機関との連携も活用する
  • 直接雇用以外の企業連携から始める方法もある
  • 業務整理を経営改善の機会として捉える

障害者雇用を「福祉だから取り組むもの」と経営から切り離して考えると、仕事内容や組織体制の検討が不足しやすくなります。

一方で、「会社にはどんな仕事があり、誰がどの業務を担当するとよいか」という経営の視点から整理すると、障害者雇用についても具体的に検討しやすくなります。

まずは現在の社内業務を洗い出し、切り出せる仕事があるか、どのような支援や配慮があれば働けるかを一つずつ確認してみましょう。

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