「就労支援事業所へ仕事を依頼したいが、どのような方法で連携できる?」「業務委託から障がい者雇用につなげることはできる?」と考えている企業担当者もいるのではないでしょうか。
企業と就労継続支援A型・B型事業所が連携する方法は、一つではありません。企業から事業所へ仕事を発注する方法、利用者と職員が企業内で請負作業を行う施設外就労、職場実習、さらに企業による直接雇用へつながる場合もあります。
一方で、企業連携は「障がいのある方へ仕事を提供すればよい」というものでもありません。企業には納期や品質があり、就労支援事業所には利用者への支援や生産活動としての目的があります。
双方が役割を理解し、業務内容、指示方法、品質基準、納期、支援体制などを整理することが、継続的な連携につながります。
この記事では、企業と就労支援事業所が連携する代表的な方法と、製造・IT・サービス業などで考えられる仕事、企業から相談するときの具体例、施設外就労の注意点、雇用や定着支援へのつなげ方まで解説します。
この記事で分かること
- 企業と就労支援事業所が連携する方法
- 業務委託と施設外就労の違い
- 製造・IT・サービス業で考えられる仕事
- 企業が仕事を依頼するときのポイント
- 企業から事業所へ相談するときの伝え方
- 職場実習や一般就労へつなげる方法
- 企業連携を長く続けるための考え方
目次
1.企業と就労支援事業所はどう連携する?
企業と就労支援事業所の連携というと、障がいのある方を企業が直接雇用することをイメージするかもしれません。
しかし、連携方法は直接雇用だけではありません。
就労継続支援A型・B型事業所では、企業から仕事を受託して事業所内で取り組んだり、一定の要件のもとで企業内において施設外就労を行ったりすることがあります。
さらに、将来的な就職を考える場合には、職場見学や職場実習、採用後の定着支援などで企業と支援機関が連携することもあります。
1-1.企業から仕事を受託する
分かりやすい企業連携の一つが、企業から就労支援事業所へ仕事を発注する方法です。
たとえば、商品の袋詰め、検品、封入、データ入力など、企業の業務の一部を事業所が受託します。
利用者は事業所の職員から支援を受けながら作業へ取り組み、事業所が企業に対して納品します。
この場合、企業が利用者一人ひとりへ仕事を直接指示するというより、企業と事業所が業務内容や品質、納期などを確認し、事業所側が作業を管理する形が基本です。
1-2.企業内で施設外就労を行う
就労継続支援では、利用者と職員が企業などへ出向き、企業から請け負った仕事を企業内で行う「施設外就労」が行われることがあります。
施設外就労は、一般的な労働者派遣とは異なります。
厚生労働省の留意事項では、施設外就労先の企業と事業所が請負作業に関する契約を結び、利用者への必要な作業指導などは企業ではなく就労支援事業所が行うこととされています。
つまり、「企業へ利用者を派遣し、企業の担当者が自由に指示を出す」という仕組みではありません。
企業内で仕事を行う場合でも、契約や指導体制を整理したうえで実施する必要があります。
1-3.職場実習や雇用で連携する
企業への就職を希望する方については、職場見学や職場実習などを通じて企業と連携する方法もあります。
実際の職場を経験することで、本人は仕事内容や職場環境を確認でき、企業側も仕事の進め方や必要な配慮を検討できます。
その後、本人と企業の希望や条件が合えば、採用につながる場合があります。
採用後も、就労支援機関やジョブコーチなどが企業と本人の双方を支援することがあります。
企業連携にはいくつかの形がある
「仕事を発注する」「企業内で請負作業を行う」「職場実習を受け入れる」「直接雇用する」では、目的や契約関係が異なります。何を目的に連携するのかを最初に整理することが大切です。
2.企業連携が必要とされる理由
就労支援事業所だけで、あらゆる種類の仕事を用意することは難しい場合があります。
企業から実際の業務を受託することで、利用者が社会の中で実際に必要とされている仕事へ取り組む機会を作ることができます。
たとえば、納期を確認する、品質基準を守る、不明な点を質問する、作業完了を報告するといった経験も、働くうえで必要になる力です。
また、企業によって業種や仕事内容が異なるため、連携先が増えることで利用者が経験できる仕事の種類も広がる可能性があります。
企業側にとっても、これまで社内で行っていた業務を整理し、外部へ委託できる仕事と社内で行うべき仕事を見直すきっかけになります。
3.製造業との連携
製造業では、企業と就労支援事業所が連携しやすい仕事が見つかる場合があります。
たとえば、部品の組み立て、検品、袋詰め、ラベル貼り、梱包などです。
ただし、「軽作業だから障がいのある方に向いている」と一律に考えることは適切ではありません。
作業によって、細かい確認が必要なもの、一定のスピードが必要なもの、力を必要とするものなど条件が異なります。
そのため、事業所では実際の作業工程を確認し、利用者が安全に取り組めるか、作業指導が可能か、納期や品質を守れるかを検討します。
企業側も、「簡単な作業だから説明しなくても分かる」と考えず、完成基準や不良品の判断方法などを具体的に共有することが重要です。
4.IT・事務業務との連携
企業連携は製造業や内職作業だけではありません。
パソコンを使用した業務を受託する就労支援事業所もあります。
- データ入力
- 商品情報の登録
- 画像加工
- 書類のデータ化
- ネットショップへの商品登録
- 簡単なWeb更新
IT・事務系の仕事では、作業方法だけでなく、個人情報や企業情報の取扱い、データの保存方法、アカウント管理なども確認する必要があります。
また、在宅で作業できる内容であっても、就労継続支援における在宅利用は、単に自宅へ仕事を渡せば成立するものではありません。
自治体の支給決定や事業所の支援体制など、必要な要件を確認したうえで実施する必要があります。
5.小売・サービス業との連携
小売業、飲食業、宿泊業などでも、就労支援事業所との連携を検討できる仕事があります。
- 商品の品出し
- バックヤード整理
- 清掃
- 備品の補充
- 調理補助
- 商品の梱包
接客を含む仕事が向いている方もいれば、人とのやり取りが少ないバックヤード業務の方が取り組みやすい方もいます。
障害名だけで配置を決めるのではなく、本人の経験や得意不得意などを確認しながら仕事内容を考えることが重要です。

6.企業が仕事を依頼するメリット
企業が就労支援事業所へ仕事を依頼する理由は、CSRだけではありません。
業務の一部を外部へ委託するためには、自社で行っている仕事を細かく整理する必要があります。
その過程で、社員が担当する必要のない定型業務や、複数部署で重複している仕事が見つかる場合があります。
たとえば営業担当者が毎日行っている封入作業やデータ入力を別の業務として整理できれば、営業担当者が顧客対応など本来の仕事へ時間を使いやすくなる場合があります。
また、企業が地域の就労支援事業所と関係を持つことで、障がい者雇用を検討するときに支援現場の情報を得やすくなることもあります。
ただし、企業連携を「安価な労働力を確保する方法」として考えることは適切ではありません。
企業にも事業所にも継続するメリットがあり、利用者にとっても意味のある仕事となる関係を作ることが重要です。
7.連携前に仕事を整理する
企業が就労支援事業所へ「何かお願いできる仕事はありませんか」と相談するケースがあります。
しかし、連携をスムーズに進めるには、企業側でも依頼したい仕事をある程度整理しておくことが重要です。
- どのような作業か
- 1回あたりの作業量
- 発注頻度
- 納期
- 完成基準
- 作業に必要な道具
- 材料の受け渡し方法
- 納品方法
たとえば「袋詰めをお願いします」だけでは、事業所側は必要な人数や時間を判断できません。
「商品3点を1袋に入れる」「月5,000袋」「毎週金曜日に納品」など具体的にすると、事業所側も対応可能か判断しやすくなります。
8.品質・納期・指示方法を決める
企業連携を継続するためには、福祉的な意義だけでなく、仕事として品質を安定させる視点も必要です。
企業が求める品質を事業所側が理解できなければ、納品後の手直しが増え、双方の負担になります。
そのため、完成品の見本、不良となる例、チェック方法などをできるだけ具体的に共有します。
また、納期に間に合わない可能性がある場合に、いつまでに連絡するのかも決めておくと安心です。
企業側の担当者と事業所側の担当者を決めておき、依頼内容の変更やトラブルがあった場合の連絡先を明確にしておきましょう。
9.小さな仕事から始める
初めて連携するときから、大量の仕事や複雑な業務を依頼する必要はありません。
まずは少量の仕事を試し、事業所がどの程度対応できるかを確認する方法があります。
実際に作業すると、「想定より確認作業に時間がかかる」「梱包資材が扱いにくい」「企業側の説明だけでは判断できない工程がある」といった課題が見つかることがあります。
最初の段階でこうした問題を確認し、作業工程や発注方法を改善してから仕事量を増やす方が、長期的な連携につながりやすくなります。

10.企業からの相談は具体的に伝える
企業が就労支援事業所へ仕事を依頼するときは、「何かお願いできる仕事はありますか」と広く相談するよりも、現在社内で困っている業務を具体的に伝える方が話を進めやすくなります。
たとえば、次のような相談方法があります。
- 毎月3,000個程度の商品袋詰めをお願いできるか
- 毎週発生する封入・発送作業を委託できるか
- 商品データの入力を月50時間程度お願いできるか
- 繁忙期だけ梱包や検品業務を依頼できるか
- 企業内の清掃などを施設外就労として相談できるか
- ネットショップの商品登録や画像加工を依頼できるか
このように、仕事内容、数量、頻度、希望する納期などを伝えることで、事業所側も必要な人数や作業時間を想定しやすくなります。
一方、最初からすべての条件を確定しておく必要はありません。
「現在社員が行っているこの作業を外部へ切り出せないか」「繁忙期だけ依頼できる仕事を探している」といった段階でも、事業所と相談しながら業務内容を整理できる場合があります。
大切なのは、単に余っている仕事を渡すのではなく、企業にとって必要な仕事であり、事業所側も継続して取り組める内容かを双方で確認することです。
相談時に伝えたい内容
「仕事内容」「数量」「頻度」「納期」「作業場所」「材料の受け渡し方法」まで分かる範囲で伝えると、事業所側が対応可能か判断しやすくなります。
11.施設外就労で注意したいこと
企業内で利用者が作業を行う施設外就労では、特に契約関係と指示系統を明確にする必要があります。
厚生労働省の留意事項では、施設外就労先の企業と事業所が請負作業に関する契約を締結し、請け負った作業について利用者への必要な指導等は事業所が行うこととされています。
企業の担当者が利用者へ直接細かな作業指示を出すなど、実態として企業の指揮命令下で働く形になると、通常の請負との関係にも注意が必要です。
施設外就労を検討するときは、「企業内で作業してもらえる」という部分だけを見るのではなく、契約、作業指導、支援員の配置など必要な要件を事業所側と確認してください。
施設外就労は人材派遣ではない
施設外就労は、就労支援事業所が企業から仕事を請け負い、利用者と職員が企業内でその作業を行う仕組みです。一般的な労働者派遣とは区別して考える必要があります。
12.職場実習から雇用へつなげる
企業連携は、業務委託だけで終わる必要はありません。
一般企業への就職を希望する利用者がいる場合には、企業見学や職場実習などを通じて、企業で働く経験につなげることも考えられます。
職場実習を行うことで、本人は実際の仕事内容や通勤、職場環境を確認できます。
企業側も、本人の得意なこと、仕事の覚え方、どのような配慮が必要かを確認する材料にできます。
実習を行ったから必ず採用しなければならないわけではありません。
本人と企業の双方が、実際に働くことをイメージしながら適性や条件を確認する機会として活用します。
13.一般就労後も連携できる
利用者が企業へ就職した後も、必要に応じて支援機関と企業が連携することがあります。
たとえば、仕事の教え方が分からない、本人との面談方法に迷う、職場で必要な配慮を整理したいといった場合には、地域障害者職業センターなどへ相談できます。
ジョブコーチによる支援では、障がいのある本人だけでなく、企業側へも仕事の教え方、職務の再設計、職場環境などについて助言が行われます。
支援機関が企業の日常的な雇用管理を代わりに行うわけではありませんが、雇用初期や課題が生じたときに外部の専門的な支援を活用することで、社内だけで抱え込まずに対応できます。
一般就労後に条件を満たす場合は、就労定着支援を利用できることもあります。
14.長く続く企業連携のポイント
企業と就労支援事業所の連携を継続するには、「福祉だから協力する」という関係だけにしないことが重要です。
企業にとっては、依頼した仕事が求める品質と納期で完了することが必要です。
事業所にとっては、利用者が継続して取り組める仕事であり、働く経験や能力の向上につながることが重要です。
双方にとって意味のある関係にするため、定期的に状況を確認します。
- 作業量は適切か
- 品質上の問題はないか
- 納期に無理がないか
- 作業工程に改善できる部分はないか
- 新しく依頼できる業務はないか
- 利用者の経験やスキルにつながっているか
取引開始時に決めた方法を固定するのではなく、実際の作業を通じて改善を繰り返すことが、継続的なパートナーシップにつながります。
15.企業連携でよくある質問
Q.企業からB型事業所へ仕事を依頼できますか?
事業所が対応できる業務であれば、企業から仕事を受託しているB型事業所があります。
作業内容、数量、納期、単価、材料の受け渡し方法などを確認したうえで、対応可能か事業所と相談します。
Q.どのような仕事を依頼できますか?
事業所によって対応できる仕事は異なります。
袋詰め、検品、封入などの作業だけでなく、データ入力やネットショップ関連業務などに対応する事業所もあります。まず依頼したい業務を整理して相談するとよいでしょう。
Q.利用者に企業から直接仕事を指示できますか?
業務委託や施設外就労では、契約関係や指示系統を明確にする必要があります。
特に施設外就労では、厚生労働省の留意事項上、請け負った作業に関する利用者への必要な指導等は就労支援事業所が行います。
Q.少量の仕事でも相談できますか?
事業所によって異なりますが、初めての連携では少量から開始することで、作業方法や品質基準を確認しやすくなる場合があります。
Q.繁忙期だけ仕事を依頼できますか?
対応できるかどうかは事業所の作業状況や受入体制によって異なります。
繁忙期だけ依頼したい場合でも、仕事の内容、予定数量、実施時期などを早めに相談すると、事業所側が対応可能か検討しやすくなります。
Q.業務委託から障がい者雇用につながることはありますか?
企業との関係をきっかけに、職場見学や実習、求人応募などへ発展する可能性はあります。
ただし、業務を委託したから利用者を採用しなければならないわけではありません。本人の希望や企業の採用条件などを確認しながら進めます。
Q.障がい者雇用について企業側も相談できますか?
はい。地域障害者職業センターなどでは、障がい者を雇用する企業に対する相談や支援も行われています。
職務の創出、社員研修、雇用管理、ジョブコーチ支援など、企業側の課題に応じた支援を利用できる場合があります。
まとめ|企業と事業所の双方に意味のある連携を
企業と就労支援事業所の連携には、さまざまな方法があります。
- 企業から事業所へ仕事を発注する
- 企業内で施設外就労を行う
- 職場見学や職場実習を受け入れる
- 本人と企業の条件が合えば採用を検討する
- 採用後も支援機関と連携する
- 品質・納期・指示方法を事前に整理する
- 仕事内容や数量を具体的に伝えて相談する
- 最初は小さな仕事から始める方法もある
- 施設外就労と労働者派遣を混同しない
企業連携で重要なのは、「福祉への協力」と「企業の業務」を別々に考えないことです。
企業にとって必要な仕事を、事業所が継続して受託できる形に整え、その仕事が利用者にとって働く経験や能力向上につながることが理想です。
そのためには、仕事内容を曖昧にせず、数量、品質、納期、単価、指示方法などを双方で確認する必要があります。
仕事の受発注から始まった関係が、職場実習や障がい者雇用、採用後の定着支援へ広がることもあります。企業と就労支援事業所がそれぞれの役割を理解し、無理のない形で関係を積み重ねることが、持続可能な企業連携につながります。
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