障がいのある家族が「働きたい」と話したとき、家族として何をすればよいのか迷うことがあります。「仕事選びを手伝った方がいい?」「事業所の見学には同行する?」「仕事を辞めたいと言われたらどうすればいい?」など、就労前だけでなく、働き始めた後にも悩みは出てきます。
家族にできることは、本人の代わりに答えを出すことではありません。本人の希望や困りごとを整理し、必要に応じて支援機関や事業所につなぎ、本人が選びやすい環境をつくることが大切です。
また、就労支援には就労移行支援、就労継続支援A型・B型、就労定着支援など複数のサービスがあります。どの支援が合うかは、本人の体調、働く力、希望する働き方、生活状況などによって異なります。
この記事では、障がいのある方の就労を家族がどう支えるかを中心に、仕事探しの前に確認したいこと、事業所見学、就職後の関わり方、仕事を辞めたいと言われたときの考え方、相談できる支援機関まで具体的に解説します。
この記事で分かること
- 障がいのある方の就労で家族ができるサポート
- 本人の希望を尊重しながら仕事を探す方法
- A型・B型など主な就労支援の違い
- 見学・利用開始後に家族が確認したいこと
- 困ったときに相談できる支援機関
目次
1.障がい者の就労で家族ができること
障がいのある方が就職や福祉サービスの利用を考えるとき、家族の存在が大きな支えになることがあります。
一方で、心配するあまり家族が先回りして決めてしまうと、本人が「自分で選んだ」という感覚を持ちにくくなることがあります。家族の役割は、本人の代わりに進路を決めることではなく、本人が考えたり選んだりしやすいように情報を整理することです。
1-1.本人の代わりに決めない
「この仕事の方が向いている」「この事業所なら安心」と家族が思っても、本人の希望と一致するとは限りません。
まずは、「どんな仕事ならやってみたい?」「何が不安?」「週に何日くらいなら働けそう?」など、本人の考えを聞いてみましょう。
本人がうまく言葉にできない場合は、選択肢をいくつか示しながら整理する方法もあります。ただし、答えを誘導せず、本人が選べる余地を残すことが大切です。
1-2.困りごとを一緒に整理する
本人から「働きたいけれど自信がない」と言われたときは、「働ける・働けない」の二択で考えるより、何に困っているかを細かく分けてみます。
- 朝起きる時間が安定しない
- 長時間の作業に不安がある
- 人が多い場所では疲れやすい
- 仕事の手順を一度で覚えるのが難しい
- 分からないことを質問するのが苦手
- 通勤に不安がある
困りごとが具体的になると、「短時間から始める」「静かな環境を探す」「職員へ相談しやすい事業所を選ぶ」といった対応を考えやすくなります。

2.仕事探しの前に確認したいこと
仕事や事業所を探す前に、本人の希望と現在の生活状況を整理しておくと、選択肢を絞りやすくなります。
2-1.本人が希望する働き方
「何の仕事をしたいか」だけでなく、「どんな働き方をしたいか」も確認します。
- 一般企業への就職を目指したい
- まずは支援を受けながら働きたい
- 週5日働くことを目指したい
- 短時間から始めたい
- パソコンを使う仕事がしたい
- 人とのやり取りが少ない仕事を希望している
目標は途中で変わっても問題ありません。最初の段階では、本人が今どのように考えているのかを確認することが大切です。
2-2.得意・苦手だけで決めない
家族は長く本人を見ているため、「細かい作業が得意」「人と話すのが苦手」など、本人の特徴をよく知っていることがあります。
ただし、「苦手だからこの仕事は無理」と早く決めすぎないことも大切です。同じ仕事でも、職場環境や支援方法が変われば取り組みやすくなる場合があります。
例えば、人との会話が苦手でも、決まった相手とのやり取りなら問題ない場合があります。細かい作業が苦手でも、見本やチェック表があれば取り組めることもあります。
2-3.生活リズムや通勤も確認する
仕事内容だけでなく、働く前後の生活も確認します。
例えば、午前9時から仕事を始める場合、何時に起きる必要があるのか、通勤にどのくらい時間がかかるのか、帰宅後にどの程度休息が必要なのかまで考えます。
見学の日だけ無理をして参加できても、毎日続けることが難しい場合があります。「継続できるか」という視点で考えると、本人に合う働き方を見つけやすくなります。
3.利用できる主な就労支援
障がいのある方の就労を支えるサービスにはいくつか種類があります。家族が制度をすべて覚える必要はありませんが、大まかな違いを知っておくと相談しやすくなります。
3-1.就労移行支援
就労移行支援は、一般企業などへの就職を希望する方が、就職に必要な知識やスキルを身につけたり、就職活動の支援を受けたりする障害福祉サービスです。
就職に向けた準備、職場探し、面接の練習、職場実習など、本人の状況に合わせた支援が行われます。実際の支援内容は事業所によって異なります。
3-2.就労継続支援A型・B型
就労継続支援A型・B型は、一般企業などで働くことが難しい方が、支援を受けながら働く機会を得るサービスです。
A型では原則として事業所と雇用契約を結んで働き、給与を受け取ります。B型では事業所との雇用契約は結ばず、生産活動などに取り組み、工賃を受け取ります。
A型とB型は優劣で選ぶものではありません。本人の体調、働ける時間、必要な支援、希望する働き方などを確認しながら検討します。
違いを詳しく確認したい方は、福祉サービスの比較ページをご覧ください。A型については就労継続支援A型、B型については就労継続支援B型のサービスページでも案内しています。
3-3.一般就労後の就労定着支援
一般企業などへ就職した後、仕事を続けるなかで職場との調整や生活面の相談が必要になることがあります。
一定の要件を満たす方は、就労定着支援を利用できる場合があります。本人と職場の間に入って相談や調整を行うなど、働き続けるための支援につながることがあります。
詳しくは就労定着支援のサービスページをご確認ください。
4.事業所選びで家族が確認したいこと
就労支援事業所を選ぶときは、サービス名だけで判断せず、本人が実際に過ごす環境を確認します。
家族が見学に同行する場合は、本人が気づきにくい部分を補う視点で確認するとよいでしょう。
- どのような仕事・作業を行うのか
- 1日の利用時間や勤務時間はどのくらいか
- 週何日から利用できるのか
- 作業中に困ったとき誰へ相談するのか
- 休憩はどのように取るのか
- 体調が悪い場合はどう相談するのか
- 事業所内の音、人の多さ、席の配置はどうか
- 本人が希望する仕事を相談できるか
- 通所方法や通所時間に無理がないか
給与や工賃だけでなく、本人が継続して利用できるかを確認することが大切です。条件が良く見えても、通所だけで疲れてしまう環境では継続が難しくなることがあります。
見学後は本人の感想を先に聞く
家族が「良い事業所だった」と感じても、本人は別の印象を持っている場合があります。見学後は家族の評価を伝える前に、「どうだった?」「気になったところはあった?」と本人の感想を聞いてみましょう。
5.見学・面談に同行するときのポイント
本人が希望している場合、家族が見学や面談に同行することがあります。
同行する目的は、本人の代わりにすべて説明したり質問したりすることではありません。本人が話しにくい部分を補い、確認したい情報を一緒に整理する役割と考えるとよいでしょう。
面談では、本人への質問に家族がすぐ答えるのではなく、まず本人が答える時間を待つことも大切です。
本人から「説明してほしい」と頼まれた場合や、生活状況について家族しか分からない情報がある場合は、本人の意向を確認したうえで補足します。
見学前に本人と一緒に質問事項をメモしておくと、当日に聞き忘れを減らせます。「仕事内容」「時間」「休憩」「困ったときの相談方法」など、本人が気になる順に整理しておくと話しやすくなります。

6.就職・利用開始後に家族ができること
就職や事業所の利用が始まった後も、家族にできるサポートがあります。ただし、働き始めた後ほど「見守ること」と「介入すること」のバランスが大切になります。
6-1.毎日仕事の結果を確認しすぎない
心配だからといって、帰宅するたびに「今日は失敗しなかった?」「職員に何か言われた?」と細かく確認すると、本人にとって家でも仕事の評価を受けているように感じることがあります。
本人が話したいときに話せる雰囲気をつくり、必要以上に聞き出さないこともサポートの一つです。
6-2.変化に気づいたら本人に確認する
一方で、いつもより疲れている、朝起きにくくなった、食事量が変わった、仕事の話を避けるようになったなど、家族だから気づける変化もあります。
その場合も「仕事が合っていない」と決めつけず、「最近疲れているように見えるけれど、何か困っている?」と本人に確認してみましょう。
仕事そのものではなく、通勤、人間関係、睡眠、通院、家庭での出来事などが影響している場合もあります。
6-3.本人だけで抱え込ませない
仕事上の困りごとが大きくなっている場合は、本人と相談しながら事業所や支援機関へつなぐことも考えます。
家族だけで解決しようとすると、本人と家族の双方が疲れてしまうことがあります。支援者と情報を共有することで、仕事内容や支援方法を調整できる場合もあります。
7.仕事を辞めたいと言われたら
本人から「仕事を辞めたい」「もう行きたくない」と言われると、家族は心配になります。
「せっかく決まったのだから続けた方がいい」と考える場合もあれば、「つらいならすぐ辞めた方がいい」と考える場合もあるでしょう。
7-1.すぐに結論を出さない
緊急性がある場合を除き、最初から「続ける」「辞める」のどちらかに決める必要はありません。
まずは本人が何に困っているのかを確認します。働くことそのものが難しいのか、特定の仕事だけがつらいのか、人間関係に困っているのかによって対応は変わります。
7-2.辞めたい理由を整理する
- 勤務時間が長く疲れる
- 仕事内容が想像と違った
- 作業手順が分からない
- 人間関係で困っている
- 周囲の音や環境が負担になっている
- 体調が悪化している
- 通勤が負担になっている
理由が整理できると、「時間を調整できないか」「仕事内容を相談できないか」「支援方法を変えられないか」など、辞める以外の選択肢が見つかることがあります。
もちろん、調整しても継続が難しい場合は、別の働き方や事業所を検討することも一つの方法です。
7-3.支援機関にも相談する
本人と家族だけで判断が難しい場合は、事業所職員、相談支援専門員、就労支援機関などへ相談します。
本人が現在受けている支援や働き方を知っている支援者と一緒に考えることで、状況を整理しやすくなることがあります。
8.家族が相談できる主な窓口
就労に関する悩みは、家族だけで抱え込まず、内容に応じて支援機関へ相談できます。
| 相談先 | 主な相談内容 |
|---|---|
| 相談支援事業所 | 障害福祉サービスの利用や生活全体の相談 |
| ハローワーク | 求人、就職活動、障がい者向け就職相談 |
| 障害者就業・生活支援センター | 就業面と生活面を一体的に相談 |
| 地域障害者職業センター | 職業評価や職場適応に関する専門的な支援 |
| 医療機関 | 体調や治療と就労の両立についての相談 |
| 利用中の事業所 | 作業・勤務・人間関係・支援方法の相談 |
どこへ相談すればよいか分からない場合は、現在利用している相談支援事業所や市区町村の障害福祉担当窓口から確認する方法があります。
だいこん畑では計画相談支援も行っています。障害福祉サービスの利用について相談したい場合は、サービスページをご確認ください。

9.家族と支援機関の情報共有
家族が本人の生活状況をよく知っている場合、その情報が支援に役立つことがあります。
例えば、「朝は時間がかかる」「予定が急に変わると混乱しやすい」「家では疲れて寝込むことがある」など、事業所だけでは分からない情報があります。
9-1.本人の同意を確認する
一方で、家族が知っている情報をすべて事業所や企業へ伝えればよいわけではありません。
本人が成人している場合などは特に、どの情報を誰に共有するのかについて本人の意向を確認することが大切です。
「支援のためだから」と家族だけで話を進めると、本人が知らないところで情報が共有され、不信感につながることがあります。
9-2.伝える情報を整理する
支援機関へ相談するときは、家族の感想だけでなく、具体的な状況を伝えると支援者も判断しやすくなります。
例えば「最近仕事がつらそうです」だけではなく、「今週は帰宅後すぐ寝る日が4日続いている」「朝の準備に以前より30分長くかかっている」など、変化を具体的に伝えます。
家族が見た事実と、本人が話している内容を分けて伝えることも大切です。
10.大阪市で就労支援を探す場合
大阪市で就労支援を探す場合も、最初から一つの事業所に決める必要はありません。
本人が希望する働き方を整理したうえで、必要に応じて相談支援事業所や市区町村の窓口などへ相談し、利用できるサービスを確認します。
就労継続支援A型・B型を検討する場合は、仕事内容や勤務・利用時間だけでなく、通所しやすさも大切です。大阪市内でも、毎日の移動時間や交通手段によって負担は変わります。
だいこん畑では、大阪市内で就労継続支援A型・B型などのサービスを提供しています。事業所を比較したい場合は、事業所一覧をご覧ください。
利用までの流れについては、利用・応募までの流れで確認できます。本人だけでは問い合わせが難しい場合など、ご家族から相談することもできます。
11.家族からよくある質問
Q1.本人が働きたがらない場合、家族から相談できますか?
家族だけで相談できる窓口もあります。ただし、実際にサービスを利用したり就職したりする際には、本人の意思や状況を確認しながら進めます。まず家族が制度や相談先を知る目的で相談する方法もあります。
Q2.家族が事業所見学に同行してもよいですか?
家族同行での見学を受け付けている事業所があります。本人が同行を希望するかを確認し、事前に事業所へ問い合わせてください。
Q3.家族が本人の代わりに事業所へ連絡してもよいですか?
状況によっては家族が連絡することもあります。ただし、本人が自分で相談できる場合は、本人の意向を尊重することも大切です。家族から連絡する必要がある場合は、本人と共有したうえで進めると行き違いを減らせます。
Q4.仕事を休む日が増えたらすぐ辞めた方がいいですか?
休みが増えた理由によって対応は異なります。勤務時間、仕事内容、人間関係、体調、通勤などのどこに負担があるかを確認し、本人の同意を得ながら事業所や支援機関へ相談してみましょう。
Q5.A型とB型のどちらを家族が勧めればよいですか?
A型とB型は家族だけで決めるのではなく、本人の希望、体調、働ける時間、必要な支援などを確認して検討します。迷う場合は、相談支援事業所や希望する事業所へ相談し、見学を通じて比較すると分かりやすくなります。
Q6.就職後も家族以外に相談できる場所はありますか?
あります。利用条件に該当する場合の就労定着支援、障害者就業・生活支援センター、ハローワークなど、就職後の相談につながる機関があります。本人がどの支援を利用しているかを事前に確認しておくと、困ったときに相談しやすくなります。
まとめ
障がいのある方の就労を家族が支えるときは、「何を選ぶか」だけではなく、「本人が自分で選びやすい状態をどうつくるか」という視点が大切です。
- 家族が本人の代わりに仕事や事業所を決めない
- 本人の希望と困りごとを具体的に整理する
- 仕事内容だけでなく生活リズムや通勤も確認する
- 見学後は家族より先に本人の感想を聞く
- 働き始めた後は必要以上に結果を確認しすぎない
- 変化があれば本人に確認し、必要に応じて支援者へ相談する
- 情報共有では本人の意向や同意を確認する
家族だけで就労の問題を解決しようとする必要はありません。本人と一緒に状況を整理し、相談支援事業所、就労支援事業所、ハローワークなど、必要な支援機関につなぐことも家族にできる大切なサポートです。
本人に合う働き方がまだ分からない場合は、いきなり利用や就職を決めるのではなく、見学や相談から始めてみる方法があります。
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